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牧野フライス精機 取締役社長 清水 大介 氏

完全に人の手が離れる自動研削に

ロングセラーの万能工具研削盤C-40(1968年発売、累計生産1万3千台超)をつくり続ける一方、10軸制御機(82年)や内蔵型マイクロビジョンシステム(JIMTOF2020で発表)など世界初の技術を披露してきた牧野フライス精機。近年は人手を介さず長時間稼働ができるマシンに注力する。

――最近は長時間無人で稼働できる機能をアピールされています。

EVDXGXというトレンドワードのほかに、自動化が強く求められていると感じています。お客様の喫緊の課題は人手不足と技能の継承ですから。この状況は10年後、今よりも確実に悪くなります」

――砥石交換装置などを用意されていますね。

「様々な砥石に対応した自動砥石交換装置、数百本を連続して研削するためのワークローダーは業界で一般的になってきました。当社製でこのどちらかが搭載された機械は現在の販売数全体の7割を超えています。この15年で大きく変わりました。私がこの業界に入った2008年あたりは『手で砥石交換したほうが早いよ』『ロットが少ないからローダーでなく手込めでやるよ』という声が一般的でした。今では10本、20本とロットが比較的少ないお客様でもローダーがあると助かるとおっしゃいます。当時は砥石交換やワークローダーのスピードが遅い、機外スペースを要するという問題もありましたが、それよりも人手不足が進んだということでしょう」

――いま最もアピールしたい製品・技術は。

「フラッグシップモデルの工具研削盤『AGE30FX』(216月発売)です。前身となる『AG30』(09年発売)を大幅に改良した機種で、機械のサイズを変えずに内蔵するローダーのワーク交換時間を45秒から20秒に短縮。ローダーに収納できる本数は細いもので123本から780本に、砥石収納は6セットから8セットに増やしました」

――自動化がさらにしやすくなったと。

 「200本以上の工具研削が一度にできます。ただし、AGE30FXは長時間の連続加工精度安定性に非常に優れた機械ではありますが、長時間の連続加工となると、どうしても熱変異の影響は避けられず、砥石は摩耗します。これまで大ロットで加工される際は途中でワークを抜き出して検査し、寸法どおりでなければ補正値を手入力する必要がありました。連続自動運転と謳うも、本当の意味での自動化ではありません。そこでJIMTOF2020で発表したのが内蔵型マイクロビジョンシステム『monocam2』です。機内のカメラがインプロセスで加工物を測定し、設定した閾値から外れれば自動補正します」

■超小径ホールにも対応

――完全に人の手が離れます。

「理論的にはすべて良品になります。これは他社にない世界唯一の機能で『AGE30FX』と『SG10』に搭載できます。大きな利点と感じるのは、どんどん細くなるドリルのオイルホールに対応できること。砥石はホールの位相を避けるかたちでドリルの定位置にきちんと当てないとオイルホールが露出して不良になります。今までは人が目で見るかタッチプローブで穴を検出していましたが、最小径005㍉のホールでは細すぎてタッチプローブで検知できない。そこでローダーがくわえて運ぶ時のホール位置の変化を逆算して最適な角度になるように人がワークをパレットに並べます。何百本と並べるのは大変な作業だし、グリップ時に少し滑ると角度がずれて不良になります。monocam2なら機内で画像からホール位置を検出します。実はニーズとしてこの用途が最も多かったのです」

――monocam2の搭載率は。

「海外ではまだ販売していないので国内だけで見ると、3分の1に近いと思います。ご存知のように工具研削盤の機内環境は最悪です。研削液を大量に高圧で当てるので霧状になります。他社製のビジョンシステムはありますが手動式で、機械をいったん止めてカメラを機内の治具に取り付けて見る必要があります。レーザー式だと機内環境にそれほど影響を受けませんが、外形しか見られない。カメラのほうが得られる情報は圧倒的に多いのです」

――どうやってカメラで見られるようにしたのかは企業秘密でしょうね。

「そうですね、メカ的な部分を含めていろいろ工夫を重ねてきました。もちろんノーメンテとは言いません。レンズを拭くなど最低限のメンテさえしていただければ、1ロット何百本を研削するのに途中でカメラが曇ったりすることはありません」

7面リレーインタビュー・牧野フライス精機清水社長P2AGE30FX(monocam2).jpg

フラッグシップモデルの工具研削盤「AGE30FX

2023310日号掲載)