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丸山製作所 国内営業本部 特販部 UFB課 大内 努 さん

切削液『ウルトラファインバブル化』のすすめ

毛穴の汚れまで落とすシャワーヘッドで、一躍有名になったウルトラファインバブル(超微細気泡・以下UFB)。一度は聞いたことがあるだろう。日本が研究や産業化で先行しており、洗浄や農業など様々な分野で活用が進む期待の技術だ。

MUFBウルトラクーラントフレッシャーの開発に携わった大内努さん

ポンプが生むナノの泡で劣化と悪臭を防止

そしてこのUFBを、水溶性クーラント液の劣化防止に活かすのが丸山製作所。今年1月に「MUFBウルトラクーラントフレッシャー」を発売し、切削を行う工場に特有の「ムッとするにおい」を根本から改善する。

そもそもUFBとは、ファインバブルという気泡の中でも特に小さなものを指す言葉だ。直径100~1㍃メートルの泡をマイクロバブルと呼び、それ未満の微細な泡をUFBと言う。マイクロバブルは発生して数分後に浮上して消えてしまうが、UFBは浮上せず刺激がなければ数カ月も液中を漂うのが両者の大きな違い。そして丸山製作所は、このUFBを一瞬で1㍉リットルあたり数億という単位で生み出す技術を保有している。

MUFBウルトラクーラントフレッシャーの使い方はシンプルだ。本体を工作機械の脇に設置し、クリーン槽に送水ポンプとホースを浸せば稼働準備が整う。クーラント液を装置に循環させ、ポンプの吐出時に真空状態を作ることでUFBを高速で生成。クリーン槽に戻ったUFBは液中の切粉に付着し、マイクロバブルのように一定の大きさになると浮力を生じさせる。あとは水面に浮かんだ切粉を取り除き、クーラント液の腐敗を防ぐという仕組みだ。

国内営業本部特販部UFB課の大内努氏によれば、同設備の導入でクーラント液を従来より1.5~2倍程度長持ちさせる効果が確認されたという。「切粉が溜まれば嫌気性細菌が繁殖し、腐敗による悪臭につながります。UFBは内圧が約3MPaあり、弾けるときの衝撃で細菌を破壊する効果があるとも考えられます」(大内氏)。クーラント液が長く使えれば、廃液処理の手間も費用も削減できる。pHを保つ調整剤も不要になり、これは企業のSDGSにも合致する。

MUFBウルトラクーラントフレッシャー_設置様子.jpg

MUFBウルトラクーラントフレッシャーはマシニングセンタの横に設置し、送水ポンプとホースをクリーン槽の中に投げ込むだけで使える

■作物の成長促進も

丸山製作所がUFBの研究をはじめたのは約3年前のこと。まずは農業分野で実証を進め、泡の表面のマイナス電位にプラス電荷を持つもの(液肥等)を吸着させて根や葉から吸収し、作物の成長を観察した。効果があるか現在のところ定かではないが、成長促進は確認されたという。その後は農業向け以外に洗浄力を高めるシャワーヘッドなど様々な製品を展開。そして満を持し、産業向けの用途開発に着手したという流れだ。

大内氏によれば、クーラント液をUFBで長寿命化できることは「ほとんど知られていない印象」だそうだ。UFB自体が目下研究の進む新しい技術であり、類似の製品が世に少ないことが背景にあるのだろう。「マイクロバブルを使う製品は他にもありますが、泡が長持ちしないので連続運転が必要です。それに対してUFBは『作り置き』が可能。我々はポンプメーカーの知見でこれを一気に生成する点が大きな強みと言えます」

クーラント液は腐敗すると悪臭を放つため工場の環境を著しく低下させる。交換も設備を止めて一日がかりで行う必要があり、できるなら避けたい作業の筆頭格だ。「クーラント液絡みの課題はやはり悪臭ですが、その点ではMUFBウルトラクーラントフレッシャーの効果をすぐに実感いただけるはずです。新しい技術ですがぜひ試してほしい」。大内氏はそう力を込める。

2023710日号掲載)