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ドイツ工作機械工業会(VDW) エグゼクティブディレクター Dr.ヴィルフリート・シェーファー 氏

EMOショーでumati使い機械をライブ接続

工作機械のメジャーな国際ショーといえば真っ先に名前が挙がるのがEMOショーだろう。今年は「EMO Hannov
er 2023」として9月18〜23日、ドイツ・ハノーバーで開催される。開催を前に2日間だけ来日した主催のドイツ工作機械工業会(VDW)のDr.ヴィルフリート・シェーファー氏が本紙独占インタビューに応じてくれた。

2年ごとに計14回来日したヴィルフリート・シェーファー氏。今後半年間で約40カ国を巡回するという。

――今年のEMOショーの最大の見どころは。

「出展者がどんな新製品を発表するのかはまだ明かされていませんが、6月にEMOプレビューというイベントを開催します。プレスの方々をフランクフルトに招き出展各社に2分間のプレゼンをしてもらいます。EMOでどんなイノベーションが発表されるのかはそこで明かされます」

――-全体としてのテーマをいくつか設定されています。

「主催者としては3つのテーマを設定しています。そのなかの『The Future of Connectivity(コネクティビティの未来)』に関しては、いつもこの例を出すのですが、私のスマホはiPhoneでビジネスパートナーのはサムスン製。私のバッテリーが切れても彼の充電器が使えない。製造業でも同じことが起きていて、現場で設備が接続されているがそれはあくまで独自のシステム内の話。ファナックはシーメンスと互換性がなく、三菱電機とボッシュも同様です。各コントローラーがそれぞれ独自に動き、データを統合的に見ることができません。そこで私たちは2017年から国際的なコンソーシアムとしてオープン言語を使ったインターフェースの標準づくりに取り組んでいます。日本、韓国、欧州のメーカーも参加しているこの規格をumatiuniversal machine tool interface)と呼んでいます。会期中にそれを使って機械をライブで接続する予定です」

――umatiでのライブ接続は初めてではありませんね。

「初めてのライブデモは19年のEMOショーで、20社のメーカーの100台のマシンを17ITシステムに接続しました。それ以外にも韓国、タイ、米国(IMTS)、日本(JIMTOF)など各国のショーでも接続デモを行っています」

■出展者も来場者も「対面」望む

――コロナ禍を経て日本の産業見本市はオンラインからリアルに移行し盛況を博しています。リアル展の魅力をどう感じますか。

「出展者も来場者も対面を待ち望んでいたということを感じています。もちろんデジタルも良かったが、デジタルだけですべての需要を十分に満たすことはできませんでした。今後もリアルでの展示会が最も重要なマーケティングの機会になるでしょう」

――前回のEMOショーはリアル開催でしたね。

21年はミラノでの開催でした。EMOショーは2年ごとの開催で、2回ハノーバーで開いた後、ミラノでという周期を繰り返します。21年はコロナの影響が多く、マスク着用の義務や接種証明の必要がありました。今回はそんな制限は一切ありません」

――何をもってEMOショーの成功を判断しますか。

「私たちは成功を計る方法としてフィードバックを基にします。アンケートを実施し、出展者にはブース訪問者数や製品に対する関心度合いを尋ね、来場者には求めていた情報を得ることができたかを聞き、その内容を分析することで成功であったか、さらなる期待に応える改善が必要かを検討します。EMOハノーバーは他の国別の展示会と異なり、出展者は70%以上がドイツ外、来場者も半数以上がドイツ外という国際的なイベント。いかにグローバルな規模で開催できたかも見ます」

――工作機械のハードウェアとしての技術は成熟してきたように見えます。

「最近は製造におけるデジタルの活用が注目されていますが、金属加工をしてモノをつくることが最終的なゴールです。予防保全やリモートコントロール、プロセスコントロールは活用すべきですが、あくまでもモノづくりのためのものであって、コアにあるのは成果物であるモノにあります」

――5年後、10年後の理想とするEMOショーの姿とは。

「ちょっと確認しないと(ケータイでどこかに電話する仕草をみせて笑う)。イベントはますますハイブリッドなものが主流になるでしょうし、私たちもその準備を始めています。たとえば前もって来場予定者に様々なデジタル情報を提供すれば、十分な知識を持ってハノーバーに来ていただけますし、来場できない方々に対しても情報提供できます」

(2023年3月10日号掲載)