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コマツ産機 代表取締役社長 北出 安志 氏

進化するIoTサービスを機械と共に

2022年8月に経済産業省による「DX認定事業者」に選定されたコマツ産機。産業機械にIoTがまだ普及していなかった2009年に独自の稼働管理システム「産機Komtrax」をリリースし、昨今ではプレス機を対象にした成形荷重の見える化やユーザーの現場の課題を解決する新たなアプリケーションなど、機能を拡張してきた。足元では大型プレス機を対象にした予知保全サービスも実を結びつつある。

――昨今の受注環境はいかがですか。

「業界で凹凸はあるものの総じて足元は悪くありません。2019年後半ごろから我々の主力である自動車メーカーの投資がやや弱含みでしたが、昨年から徐々に復調。足元の需要は19年前半の水準へ戻りつつあります。好調なのはエアコンやエコキュートなど住宅設備向け。設備規模で言えば大型・中型プレス機は回復傾向で、小型プレス機や板金機械は補助金効果もあり好調に推移しています」

――主力の自動車ビジネスにEV化の影響はありますか。

EV化で最も影響を受けるのは内燃機関ですが、我々の製品は大半がボディやシャーシ、内装部品向け。エンジン製造にはあまり用いられません。内燃機関がなくなると差別化のために外装デザインが複雑化してプレス機の成形性が問われる可能性はありますが、いずれにせよEV化による負の影響は限定的と捉えています。逆にこれを好機とし、バッテリーケースなど新分野への拡販を狙います」

――カーボンニュートラル(CN)で生産財にも省エネ性能が求められています。貴社製品の訴求ポイントは。

CNに対するアプローチは2つ。まず主力のサーボプレス機は電力消費の削減が可能なCNに資する設備と言えます。大型サーボではメカプレスと比べ消費電力を約30%抑えた例もあり、小型サーボも省エネ性に優れるため省エネ関連補助金で導入いただくケースが増えてきました。もうひとつはファイバレーザ加工機で、CO2レーザ機と比べ消費電力の低減が可能です」

――2月末には業界初の水中切断ファイバレーザ加工機も発表されました。

「水中で加工するためヒュームが発生せず、集塵機が不要で従来のファイバレーザ機よりさらに消費電力を抑えられます。常に水で冷却しながら加工を行うことでバーニングによる加工不良も抑制。製品間ピッチを縮めて歩留まりの改善が期待できます。レーザ光を水で遮るため安全性も高くメリットの多い製品です」

■予知保全で次世代メンテナンス

――2022年にDX認定事業者へ選定され、IoTサービスにも注力されています。

DXと言っても裾野が広いですが、2020年から私の直下にICTビジネス推進室を設けて取組みを加速しています。それ以前から大型サーボプレス機を対象とした予知保全にも取組んでおり、減速機やサーボモータなど重要部品に限りますが、部品の状態をモニタリングしながらAIで最適な交換時期を推奨するサービスが形になってきました。一方で稼働管理システム『産機Komtrax』も、さらにお客さまの現場の課題を解決する新たなアプリケーションとして機能を拡充しています。」

――予知保全と産機Komtraxは別軸の取組みですか。

「予知保全は我々のプレス機が数多く稼働する大手自動車ユーザー向け、産機Komtraxは中・小規模ユーザー向けのため別軸と言って差し支えありません。自動車メーカーではプレスラインが止まれば生産自体が止まるため、短期間で早く部品交換を行う方式が主流で保全に多大な工数を割いています。これをCBM(状態基準保全)に切替えて部品寿命を延ばし、突発停止を防ぎつつ保全費を下げるのが予知保全の狙いです。一方産機Komtraxはプレス機を対象に、機械の状態だけでなく実際の成形荷重を見れる『使われ方モニタ』機能を新たに追加しました。プレス機の異常停止や故障の多くは生産時の金型への負荷の大きさやかけ方に起因します。そこを可視化し、ユーザーの生産性向上に資する情報を提供するのが目的です」

――こうした取組みの今後の方向性は。

DXは響きこそ華々しいですが実のところ非常に地道な取組み。特に我々は予知保全に教示型のAIを使っており、正確な教示データをいかに多く蓄積できるかが開発の鍵を握ります。そのためには機械の出荷台数を確保せねばならず、あくまでDXと機械はセットだという認識で歩調を合わせる必要があります。この視座を忘れず、納入後も進化する生産財を目指して引き続き予知保全と産機Komtraxの進化に努めます」

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今年1月に発売した「TWCL10-1」は、業界初の水中切断ファイバレーザ加工機。高い冷却能力で熱による不良を抑えるほか、レーザ光を水で減光することでレーザ安全クラス1とカバーレスを実現した

2023310日号掲載)