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相澤鐵工所 代表取締役社長 相澤 邦充 氏

シャーリング国内首位、機械の再生や全自動に力

シャーリングとプレスブレーキの専業メーカー、相澤鐵工所が今年5月1日に創業100周年を迎える。国内販売シェア首位のシャーリングを軸に、使い込んだ機械の再生や周辺装置を含めた全自動化にも注力する。3代目の相澤邦充社長にこれまでの歩みと今後を聞いた。

あいざわ・くにみつ 1965年生まれ。東北大学工学部修士課程を修了し(専攻は油圧制御)、「今でも制御エンジニアという気概はある」と力を込める。「浦和生まれ浦和育ちのサッカー少年で、埼玉スタジアムにはよく行きます」

――創業100周年を迎えられる企業はそうはありません。

「創業者の祖父は横須賀の海軍工廠で働いていました。日露戦争の頃です。腕のいい部品加工の職人だったようで、戦後は川口に移住し部品加工業を始めました。仕事が減ったのを機に下請けから機械メーカーになりました。私は30歳の時に父から事業を継ぎ、27年目です。ライバル会社は強大で、当社のメイン商品であるシャーは丈夫で長持ちをウリに生き残り、日本のシェアはおそらく5割を超えていると思います(累計販売約5万台)。とはいえレーザーなどの代替工法が現れるなか、ニッチな成熟商品ですから買い換え需要がほとんど。景気が悪いと真っ先に影響を受けます」

――景気の浮き沈みはたくさん経験されましたか。

「リーマンショックや311を経験し、近年は国土強靭化が打ち出されて国内需要が回復したと思ったら新型コロナです。100年に一度という出来事が10年に一度起こっているように感じます。モノづくりは人づくりのところがあり、昔は10年勤めて一人前と言われました。それをデジタル化で数年にできないかと模索していますが、じっくり取り組むことが難しくなってきたと感じますね」

――生産台数の波は大きいですか。

「高度成長期のシャーリングだけで月産200台という数字は今でも最高記録です。現在はシャーで15台、プレスブレーキは5台ほど。当社は専業メーカーとして小回りを利かせ、お客様ごとのカスタマイズに注力しています。母材の搬送から切断、集積までを無人で行うオートシャーをつくるメーカーは世界でも例がありません。少し前は多品種少量が行き過ぎて全自動機にかけるよりも汎用機のほうが有効だという声もありましたが、最近は人手不足から自動化ニーズが増えています。オートシャーは月産2台くらいですが、新しい商品で新しいマーケットを切り開いていかねばなりません」

――今夏の鍛圧機械展「MF-TOKYO」では何を訴えますか。

「大きすぎて展示はできませんが、鋼板のせん断加工の全自動化を厚板領域でできることを紹介します。今までの自動車部品向けの32㍉くらいまでの薄板切断から4.5㍉、6㍉と能力を高め、ついに9㍉まできました。自動車だけでなく建材分野にも全自動をアピールしたい。当社の汎用のシャーでは9㍉、12㍉対応もあり、台数としては12㍉の機械のほうがよく売れているので、全自動機も12㍉までは能力アップしようと考えています」

――次の100年に向けての取組みは。

3つあります。1つはReborn & SustainableRaS)事業で、専用サイトを2月にオープンしました。当社機のライフサイクルを考えると機械部品は丈夫で長持ちですが電子部品はそこまでの寿命がなく、廃型になるのも早い。そこで従来は新しい機械を買ってくださいだったわけですが、鉄は製造時に多くのCO2を出します。それに対しRaS事業では下取りした機械をオーバーホールして機械部品はリサイクルしつつIoT/DX時代にも対応した最新の制御に乗せ換えていく。当社のような中小企業でも持続可能社会に何か貢献できないかと考えたときに、東日本大震災で津波をかぶったお客様の機械を一生懸命再生した経験がヒントになりました」

2つ目は画像処理とロボットを使って切断加工品を集積する装置の提供です。シャー加工は自動でも集積時に人手に頼っていることも多いので、そこも含めて自動化する。4年前のMF-TOKYOで名刺サイズのワークを対象としたコンセプト機を展示し、その後販売した実績があります。大きな柱に育てたい」

3つ目は、2年前に50周年を迎えた岩手工場の更なる活用です。北東北は自動車、半導体生産の集積地になりつつあります。この延長線でEV生産の都になることが期待されています。国際リニアコライダー(超高エネルギーの電子・陽電子の衝突実験を行うための加速器計画)が岩手県に建設される可能性もあり、先端産業の一大集積地で当社が果たせる役割があると考えています」

4面相澤鉄工所・相澤邦充社長インタビューP2.jpg

40年稼働したシャー「MPS-520 OH」を完全に分解整備し、最新の部品に交換したRaS事業の例

2023310日掲載)