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製造業DX実現のカギ~第2回

部品表・工程表と生産設備情報のデジタル化

まだまだ製造業ではデジタル化が必要にもかかわらず、アナログから脱却できていない、データの有効活用にまで至っていないケースが数多く存在する。今回は「BOM(ボム・部品表)」「BOP(ボップ・工程表)」「生産設備情報」についての簡単な解説と、デジタル化が実現し、そのデータが活用できた場合にもたらされるメリットについて説明する。

まずは「BOM」について説明する。「BOM」は製造業の各工程で活用され、目的によって見え方・必要な情報・活用方法が異なってくるため「技術BOM」「販売BOM」など様々なものが存在する。ここでは生産部門が活用する「製造BOM」を中心に説明する。「BOMBill of Materials)」は部品表と訳される。

工場で生産される製品は多くの部品から構成されており、その部品同士がさらに部品を構成し、組み立てられて最終製品となる。そのため、BOMは「品目情報」と品目情報の親子関係を管理する「構成管理情報」から構成される。

最近では、三次元CADで制作された図面とBOM情報を紐づけて、統合管理することも増えてきてはいるものの、表計算ソフトで単純な部品表として管理されているケースも多い。また、多くの企業ではこの「情報管理」が課題となっており、せっかくデジタル化されたBOMデータも、同じ部品であっても拠点間でその管理方法が異なったり、さらには同じ拠点の同じ部品であっても、仕向け先が違うだけで別のコードが割り振られたりと、活用できる状態になっていないことも多い。

このBOMがしっかり統合され、三次元CADデータなど他のデータと組み合わせて利活用できるようになると、工程管理がスムーズにできるだけではなく、設計変更時の手戻り削減や、在庫数の適正化などあらゆる場面でメリットが享受できるようになる。

■自動化を推進するデータ活用

次に「BOPBill of Process)」について説明したい。「BOP」は工程表と訳される通り、製品を組み立てるときの流れを表している。品番、型式、製品仕様などのBOM情報と密接に関連しており、生産するための作業手順、検査項目、設備、製造条件、作業時間、工程図などが含まれるデータセットになる。

このBOPについては、すべてが統合的にデジタル化されている企業はほとんどなく、「作業手順書」「検査仕様書」などとそれぞれの機能が名前を変えて現場に存在しているケースが多い。

特に日本企業が得意とする、部品点数が多い製品(=製造工程が複雑)については、データ量が膨大なものになったり、現在製造に携わっている方にとっては当たり前すぎたり、言語化しにくい内容も多く、これらのデジタル化を非常に困難にしている。現場の阿吽の呼吸で言語化されていない部分を補っているケースも多く、逆にこの阿吽の呼吸で各種帳票の行間を補えるということが日本の製造現場の強みでもあると言える。

しかし今後、さらに仕事の流動性が高まり、未経験者や海外からの労働者が増えることは明らかである。また、そもそも自動化するためには、これらの作業をデジタルで置き換える必要がある。そのため、BOPのデジタル化はBOMのデジタル化とあわせて急務となってくる。BOPのデジタル化を進めることで、あらゆる工程が言語化され、同じ品質でだれもが作業することができ、自動化を推進するためのベースのデータとして活用ができる。

「生産設備」については、まさにこれからデジタル化が急務な領域だと考えている。ここで言う「生産設備」は自動機やロボット、周辺の治具などを含めた「生産に関わる設備全体」を指している。

生産設備も、近年では三次元CADで設計されることが増えてきているため、新しい設備の機械図面・電気図面としてはデジタル化が完了していることも多い。しかし、生産現場の設備は数十年前から稼働しているものも少なくなく、それらの設備は紙の図面さえないケースや、図面があったとしても改造が施され、その改造された部分は図面に反映されていない場合がほとんどである。

また設備単体だけではなく、生産ライン全体、工場全体となるとデジタル化されていることは皆無といっても過言ではない。このデジタル化が製造業DXの成功において重要な起点となると考えている。

20211225日号掲載)

チームクロスFA代表 天野 眞也
あまの しんや=1969年東京生まれ。法政大学卒。1992年キーエンス入社。2年目には全社内で営業トップの成績を残した「伝説のセールスマン」。2010年にキーエンス退社、起業。現在はFAプロダクツ、日本サポートシステム、ロボコム等の代表取締役、ロボットSIerによるコンソーシアム『Team Cross FA』ではプロデュース統括を担っている。趣味は車、バイク、ゴルフなど。