日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として半世紀を超す実績。
日本物流新聞社のWEBサイトでは、
ものづくりを支える工作機械、工具、ロボット、産業機器等の情報から、
ハウジングはじめ住まい・暮らしの様々なニュースをお届けしています。

検索

特集

工場訪問:シギヤ精機製作所の工場増設狙いは多岐に

増産&短納期効果とともに、工場改革進める

増設して生まれた「エリア5」の一部。10月から本格稼動。

円筒研削盤ひと筋の工作機械メーカー、シギヤ精機製作所(広島県福山市、鴫谷憲和社長)が、約20億円を投資し本社工場を増設した。組立スペースが大半を占める「エリア5」と呼ぶ一画(=左写真)がそうで、今年10月に本格稼動。さらに超精密の大型平面研削盤を導入するなど現場力強化に動いている。工場増設によって同社は円筒研削盤の生産量2割アップを見込むが、狙いはそれだけでない。現地で話を聞いた。


シギヤ精機製作所の本社工場は瀬戸内海を一望できる小高い丘の上を独占して建つ。丘の入り口から工場まで、手入れされた緑を眺めながらゆっくり車で登ることになり、一瞬、古城見学にでも来た気分になる。丘は眺めの良さとともに、精密機械づくりに打ってつけの固い地盤が自慢だそうだ。

その丘の上の工場を増床し、今年10月から組立スペースが中心となる「エリア5」を稼動させた。直接効果として生産キャパの2割アップを見込むが、現地ではの取組みが様々行なわれていた。

超精密平面研削盤を追加導入.jpg

超精密平面研削盤を追加導入

■超精密平面研削盤が12月稼動

一つには、エリア5の誕生を契機に生産プロセスの改善・改革を進めている点が上げられる。同社の主要機械設備の一つに、テーブル12㍍の超精密大型平面研削盤1台(NAGASE製)があるが、大物のベッド加工に時間がかかるため、時に小型研削盤製造でボトルネックを生み出していた。そこで今度はテーブル5㍍サイズの超精密平面研削盤(同じくNAGASE=下写真)を恒温室に追加導入し、2つの平面研削盤を役割分担させながら加工のリードタイム短縮を図っている。新導入の平面研削盤は11月に据えつけたばかり。テストを経て12月に入り稼動したようだ。

また、工場の床面積を広げることで内製を更に強化。「高精度が常に要求される研削の世界で、主要部品の加工を内製によってレベルアップさせる。こうした改革を、今回の増床を契機にいくつか行なっている」(鴫谷社長)。

ロボット化の要求に応えることも増えている.jpg

ロボット化の要求に応えることも増えている

■テスト加工を増やし、新ワークの研削にもトライ

増床した「エリア5」は大半が組立スペースだが、ショールーム(SR)の傍にあった多数の生産機械をエリアの恒温室の一部に移動させた。こうすることでSRのスペースをほぼ倍化できる。「近々SRを充実させ、すべての展示機械であらゆるテスト加工を実施できるようにする。新しいワークの研削にもトライしていく」(鴫谷社長)考えだ。

精密円筒研削盤の役割として、近年はEV用電池部品のセパレーターフィルムの製造に使われる大型ロール研削加工や、ロボットの関節で使う精密減速機の精密部品加工など、新たな需要が広がっている。そこには素材の変化も見られるようだ。新需要や素材変化への対応を含め、取り組むべきことは多い。「研削盤は基本、砥石とセットになって超精密を究めていきます。したがって、テストカットや膨大データの分析を通じ、砥石と機械のベストマッチをはかりながら、最適な加工条件を提示することが必要です」(同)。

鴫谷社長は取材時に何度か「使いやすい機械を提供していきたい」と話した。熟練工が減って経験の浅い機械オペレーターが増えるなか、「使いやすさのニーズは更に高まる」と見る。

そして、使いやすさの創出は、メーカー側の努力があってこそ生まれるものであるようだ。熱変位対策、AIによる条件最適化、精度のブレの事前把握。鴫谷社長は「使いやすい機械でもお客様のコスト負担になるようでは評価されない」(同)といい、コストを抑えながら、円筒研削盤のさらなる精度向上と生産性を追い求めるとした。

その為の大きな一歩が今回の増設。引き続き改革の歩みを進める。

高精度と使いやすさを両立させたいと鴫谷社長.jpg

高精度と使いやすさを両立させたいと鴫谷社長

20221210日号掲載)