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ウィズコロナ時代の「アジア供給網」再編  〈上〉

サプライチェーン強靭化

海外移管か、国内回帰か

生産移管が進むベトナム

ベトナム移管に拍車がかかる

コロナ禍以前からの米中摩擦、さらに遡れば急成長を遂げた中国の人件費高騰など、中国からの生産移管は世界的なパンデミックの前からトレンドになっている。

日本の大手企業における昨今の動向を見ても明らかだ。任天堂は主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の生産の一部を中国からベトナムに移管。カシオは米国による関税制裁を視野に入れ、自社のアメリカ向け輸出分を、中国から日本やタイの拠点での生産へ切り替えた。コマツは建築機械部品の生産を、アメリカやタイおよび日本に移管した。リコーは複合機のアメリカ向け生産を中国からタイへシフトした。

ダイキンはエアコン生産を日本国内及びベトナムへの移管を進めている。同社の十河雅則社長が「今後の成長の鍵は空気・換気分野」と明言し、世界的に需要が高まっている空気清浄機の生産についても、中国でも生産から一部を国内工場での生産に切り替える方針だ

こうした動きは日本企業だけに留まらない。アップルは自社製品の各サプライヤーに中国生産の15〜30%を海外に分散するよう要請。サプライヤーの多くはベトナムを中心に新たな供給網を構築している。また有力サプライヤーの鴻海精密(ホンハイ)はアップルより請け負っているiPhoneの最新モデルの生産を、2019年にインド南部へ移管することを発表している。

ダイキンのベトナム工場
ダイキンのベトナム工場

パソコン大手の華碩電脳(エイスース)は、パソコンの生産を台湾、ベトナムへ移管。和碩聯合科技(ペガトロン)も、中国での通信機器の生産ラインの一部をインドネシアへ移管。オランダ電機大手のフィリップスや米ヒューレット・パッカード、デルも中国から他国への生産移管を検討すると発表している。

いましばらくは「ウィズコロナ」を念頭に置いた対応が求められる中、日本政府も特定国への供給依存を是正すべく、様々な施策を打ち出している。そのひとつが「海外サプライチェーン多元化等支援事業」であり、その採択事業者(=表1)を見てみると海外移転先のニーズが見えてくる。

 

【表1】

第一回公募(設備導入補助型)の採択事業者30社のうち、半数の15社がベトナムへの移転計画を申請、次いでタイ、マレーシア、フィリピンとなり、改めて海外生産拠点としてベトナムが支持されていることが窺える。

調達コストや地政学上のリスクを鑑み、かねてから移転を検討してきた企業からすれば、今回の補助金施策は「渡りに船」であり、移転に拍車をかけるきっかけとなったのは間違いないだろう。

(2020年11月25日号掲載)

〈中〉につづく