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現場で輝く作業工具

使いやすく・疲れにくく・より機能的に

モノづくり現場で職人の熟練のワザを支える作業工具。持つ、つかむ、切る、締める、たたく……、シンプルな動作だからこそ細部のこだわりが光る。作業工具の奥深い魅力にスポットを当てる。  

定番製品からユーザーニーズを取り入れた新製品、他社製品との差異化、あるいはニッチながら堅く支持されている隠れた名品・逸品まで、現場で選ばれる多彩な工具を幅広く取り上げた。


機械化や自動化が進む中、作業工具が必要な現場はまだまだ多い。2023年の建設投資見通しも、前年比2.2%増の703200億と増加傾向にある。人材不足の現状、職人一人あたりの作業量は増加している。

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複数の現場を限られた工期でかけもちする職人がほとんどで、作業効率が給料に直接影響する。職人が今求めているのは、工具自体の取り回しの良さはもちろん、収納のしやすさや複数の機能を一丁でまかなえる多機能工具など、手間を省ける工具へのニーズが高まっているようだ。

■軽量化やデザイン性を求める声集まる

経済産業省「生産動態統計」を基に、2017年から2022年までの作業工具の販売推移をまとめた(グラフ)。コロナ禍の20年では一時的に400億円を割り込んだが、翌年には反動で持ち上がり、22年はさらに伸長している。

ただし作業工具メーカーの担当者からは現場作業者の高齢化を問題視する声も聞いた。円安が続く昨今、外国人労働者がより賃金の高い国へ流れていけば、状況は深刻さを増す。

そのような中、高齢化も一因としてあるが、職業柄腰痛に悩む職人が多く、連続作業が多い現場では「工具の軽量化」が明確なニーズとしてあるという。

また一方で、主に30~40代では、製品情報をSNSから得て、積極的に新しい工具を試すといった活発な変化も生まれている。「高価であってもいいものが欲しい、人と違ったものが欲しい」という需要が昔より顕在化しており、工具の見た目へのこだわりに対応するメーカーも増えている。

メーカーからは「これまでは『工具は安くなければ売れない』という考えが、国内だけでなく国外でも根強くあったが、他にはないデザイン性を求めて韓国や台湾の代理店から声がかかったり、アメリカのユーザーから直接SNSを通じた問い合わせが入ることもある」と作業工具を取り巻く全世界的な変化をうかがわせる話もあった。

他にも「デザインや耐久性、高品質など付加価値を求める職人さんと、安い方がいいというニーズももちろんあり、二極化している」との声も聞いた。


現場で輝く作業工具 製品紹介


MCCコーポレーション、幅広い材料に対応するエンビカッタ

切り終わりまで滑らかな切れ味


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軽量で片手操作が可能なエンビカッタ「VC-0334A

水道・電設などの配管用パイプを切断するエンビカッタ。滑らかな切れ味で多くのユーザーから支持される同社のエンビカッタシリーズに、φ34φ42まで切断可能な2サイズ「VC-0334A」「VC-0342A」が加わった。刃に特殊コーティングを施し、切り終わりまで軽く滑らかに切断できる。切り口もきれいに仕上がり、後処理が不要となり作業の負担を軽減する。硬質ポリ塩ビ管やポリエチレン管など幅広い材料を1丁で切断でき、経済的なのも魅力だ。ハンドルを開けば自動で刃が開く独自のワンタッチオープン機構を採用しており、片手操作可能で作業性を向上する。

ダイキャスト製の本体は軽量でありながら強靭なボディを実現した。全開時の刃の開き幅は76㍉メートル(VC-0334A)とコンパクトで、床際や壁際などの障害物がある狭所作業にも対応する。 

VC-0342Aは刃に搭載された穴で塩ビパイプの外面取りが可能。切断と面取りの2つの作業が行える。専用アタッチメントを取り付ければワイヤープロテクター、電線モールの切断もでき、90度切断のほか、45度の斜め切りも可能。

替刃交換はボルトとバネを外すだけで行え、手間も少ない点も長く使いやすいポイントだ。


エンジニア、合体工具8点セット「DXZ-09

あらゆるネジトラブル解決に


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DXZ-09

DXに因んだ「ネジタルトランスフォーメーション」を謳うエンジニアは、状況に応じ選べる合体工具で、狭所や難所のネジトラブルを解決する。このほど新製品のバイスプライヤーを加えた8点セット(DXZ-09)を用意し、より幅広い活用シーンに対応する。

バイスプライヤー「ネジザウルスVP-(PZ-67)」はオートアジャスト型で、薄物から厚物まで一発でロック可能。従来のバイスプライヤーのような開き幅の調整が不要で、作業効率がアップする。調節ネジで保持力の調節も行える。大小さまざまなネジを掴んで外せるネジザウルス機能も備えた。(対応ネジ頭サイズは3~9.5㍉メートル)

合体工具の持手となる「GTドライヴ」は人間工学(エルゴノミクス)デザインで、力を加えやすい薄型形状。対辺13㍉メートルのボルスター付きでレンチをかけて高トルク出力も可能だ。

回転だけでなく衝撃も加えられる「貫通エクステンション」は貫通ドライバーの延長としても使え、スリムヘッドで奥まった狭い場所に向く。「ユニバーサルジョイント」は15度の首振りでコーナーや壁際のネジに対応する。

なめた皿ネジを叩かず外せる「ネジバズーカ」、なめた六角穴付ボルトを叩かず外せる「ネジモグラ」などネジ溝の状況に応じてビットを選択。

強力マグネットでネジを固定する「ネジキャッチ」は可変式で段付きビットやトーションビットにも柔軟に使える。

「どてらい市などの対面式商談展示会では、外せないネジを寿司ネタに見立てた『ねじは寿司』(=写真左)を実演している。毎回好評を博しており、売上げを伸ばしている」(同社)とバラエティーに富むネジ外しソリューションを披露する。


フジ矢、KUROKIN収納シリーズ「Light PU Leather

ブランド工具を収納する上質デザイン


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質感にこだわり、KUROKIN工具シリーズとの統一感を打ち出した

黒地のボディと刃に、金のワンポイント装飾を施したブランド工具「KUROKIN」シリーズ。スタイリッシュな見た目でSNSから人気を獲得し、工具のラインナップを増やし続ける。アイテム数が豊富になるにつれ腰回りもKUROKINで統一できるよう、収納袋にベルトとサスペンダーを加えた「Light PU Leather」シリーズを拡充、市場に投入した。

素材は本革と似た繊維構造を化学的に作った人工皮革を採用。「軽量ランドセルなどと同じ素材で、様々な工具を扱う職人さんの腰への負担を軽くしました。さらにゲリラ豪雨や炎天下など様々な現場を想定し耐水・耐久性を確保。本皮の質感に近い高級感と手入れのラクさを両立させています」(マーケティング本部プロダクトデザイン部太田佳宏マネージャー)

落下防止用のDカンには本メッキを用いるなど、細部のデザイン性にもよりこだわった。

インスタグラムのライブ配信で「KUROKINのサポーターベルトがほしい」とリアルタイムで寄せられたコメントに応える形で商品開発したという。

「昨年末の発売時には7点だったアイテム数を、合計21点まで大幅に増やしました。従来の「PVC」シリーズは今も伸び続ける人気ラインですが、PUシリーズの方が高価で後発でありながら売上げは従来シリーズに肉薄しつつあります」(太田マネージャー)と勢いのある滑り出しを語る。


TONE、コードレスラチェットレンチ

ボルト・ナット回しの作業性を飛躍


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回転方向の切替も可能で、締め・緩めのどちらも効率化

TONEの工具に電動と手動の良さを兼ね備えた実力派の新人が加わった。144Vリチウムイオンバッテリ搭載、95sqの「コードレスラチェットレンチ」だ。ボルト・ナットの早回しを電動で、本締めを手動で行うことで効率を飛躍させる便利な1台だが、これだけで終わらないのが同社の工具。様々なシーンを想定した便利な諸機能が組み込まれている。

最大の特長とも言えるのが持ち前のパワフルさだ。無負荷時は毎分450回転、最大トルクは電動で61Nm(手動時62Nm)とパワー不足によるストレスを感じさせない仕様ながら、スイッチの引き具合で無段階の出力調整ができるためオーバートルクの心配もない。ラチェットレンチと比べ狭所に差し込みづらいのが弱点かと思いきや「我々は豊富なアダプタ・アタッチメント類を揃えており、必要に応じて先端に装着いただくことで狭い場所でも活躍できる」(担当者)と隙がない。LED搭載で暗所でも使いやすく、バッテリ残量を表示できるため急な充電切れに悩むこともなさそうだ。担当者は「ラチェットハンドルを使うあらゆる用途で今すぐ活躍できるはず」と太鼓判を押した。

ラインアップとしてスタンダード仕様の「CR3120」に加え、ロングネックでよりアクセス性が高い「CR3120L」を用意。詳細はまだ未定だがラインアップの拡充も視野に入れているという。「機種がさらに広がればより使いやすさが高まるはず。今後にぜひご期待ください」(担当者)


ロブテックス、強さに自信あり、エビ印のシャコ万力

皿交換で高品質工具を経済的に


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ワークを保持する皿部分を、専用工具なしで簡単に交換できるように

つかむ・曲げる・切る、あるいはクランプする。そうした工具の基本性能を真摯に追求するのがロブテックスの姿勢であり、シャコ万力も例外ではない。1957年発売のベストセラー工具で、鍛造や機械加工、熱処理までをすべて国内自社工場で担うからこその頑強さは業界でも随一。ワークを逃さず固定するという原点を磨き抜き、「エビ印のシャコ万力は丈夫」という共通認識を浸透させた。担当者も「通常の使い方ではまず破断しない」と強い自信を覗かせる、タフな工具だ。

このように本体の強度に定評のあるシャコ万力だが、一方でねじの先に付いた『皿』は消耗品。繰り返し使用する中で様々な要因により、どうしても使用中に外れてしまうことがある。シャコ万力は首振り機能を備えた皿がワークを面で捉えて固定する構造で、皿がなければクランプ力が低下し安全性が阻害されてしまう。しかし既存のシャコ万力では皿交換にかなり先端の細いリングプライヤが必要。結果として多くの現場で、皿を失ったシャコ万力が使われているのが実情だった。

この状況を打破するべく同社が開発したのが「B型シャコ万力 スタンダードタイプ」だ。レンチ1本ですぐに皿交換が可能で、皿セットは別売りのため気軽に入手できる。エビ印のシャコ万力は強度や信頼性の高さゆえにややハイエンドだが、皿が簡単に交換できれば本体を買い替える必要もなくなる。「高品質のシャコ万力を、長期スパンで見れば非常にお得にお使いいただける」と担当者は力を込める。

(2023年11月25日号掲載)