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【2024関西経済】万博、インバウンド、設備投資

「関西の実質経済成長率は1.1%と緩やかな回復が続くと予想される」(日本総合研究所)、「成長率は前年比1.8%。大阪・関西万博に向けた工事等により設備投資、公共投資が伸びることが成長に寄与する」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、「関西の実質GRP成長率は1.2%と推計される。数字が示すとおり、低調な推移にとどまる見込みである」(りそな総合研究所)。

kannai202404-8.jpg年末にかけて民間調査機関が発表した2024年の関西経済の見通しには、このように若干のバラつきが見られた。それだけまだら模様の景気だと言えそうだが、いずれのレポートもインバウンドと万博による公共投資の増加を景気の好材料に挙げた点では一致する。日銀大阪支店の42日の発表では、関西企業の設備投資マインドを「増加している」とするなど製造業にも上がり目を感じさせた。総じて足元の関西経済は、緩やかな回復基調の最中にあると言える。

設備投資は堅調

日銀大阪支店によれば、生産は一部自動車メーカーの操業停止の影響などから弱い動きに。しかしその要因を除けば基調として横ばい圏内で、北米向け生産用機械が堅調に推移。汎用・業務用機械も高水準の受注残を背景に底堅く推移しているとする。反面、中国の減速の影響を受ける電子部品・デバイスは低調で、輸送機械も先述の生産停止の影響から大きく減少。しかし順次稼働の再開に向けた動きがとられており(ダイハツ工業本社工場のコペンは57日に生産再開予定)、生産の落ち込みは徐々に解消へ向かいそうだ。

設備投資意欲も落ちていない。近畿経済産業局が419日に発表した近畿経済の動向(2月指標中心)によれば、近畿における24年度の製造業の設備投資計画の額は前年度比7.1%と、全国(5.1%増)や前年度計画(4.1%増)をともに上回る水準だった。

日銀大阪支店は42日に関西景気の総括判断を「一部に弱めの動きがみられるものの、基調としては緩やかに持ち直している」と前回の判断より若干引き下げているが、これは一部自動車の生産停止を念頭に置いたもの。生産が再び軌道に乗れば景気の回復基調は維持されるものと見込まれる。

賃上げなるか

翻って個人消費はどうか。近畿経済産業局は「緩やかに改善している」と評しており、底堅い動きをうかがわせた。2月の近畿地域の百貨店・スーパーの販売額は前年同月比で9.2%増と、好調に推移。特に百貨店はインバウンド需要がけん引役となっており、旅行者による消費の底上げは今後も引き続き期待できるだろう。

ただし懸念もある。実質賃金がどこまで上げられるかがいまだ見えてこない点だ。今年の春闘では賃上げ率が33年ぶりに5%を超えたことが話題となったが、大企業と中小企業には賃上げの余力に大きな差がある。帝国データバンクが326日に公表した調査では、中小企業の潜在賃上げ力は平均5.90%、大企業では同18.93%(企業の純利益の30%を人件費へ投資する前提で計算)と体力に差があることが明らかになった。個人消費が伸びなければ関西経済全体も浮揚の芽をつかみづらい。中小企業の賃上げ動向は、今後の関西景気を左右する重要なファクターとなりそうだ。


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