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企業訪問:スズカ板金製作所

2年目の従業員が5年目の仕事を難なくこなす

MACSheet-BENDが教育係の代わりに

村田機械のプレスブレーキ「BB6013」

「優秀な教育係を一人雇った感じで、想像以上の働きをしてくれています」

そうキャドマック製のベンディング用シミュレーションソフト「MACSheet-BEND」を評すのはスズカ板金製作所(神奈川県川崎市、社員5人)の鈴木真次代表取締役。1971年に鈴木代表の父・鈴木一清会長が創業した同社は、鈴木代表が家業を継いで以降、地の利のある仕事へとフォーカスしてきた。鈴木代表は「オンラインでどことでも繋がる時代に、地方や海外よりも土地代や人件費が高い京浜地区でも、急ぎで少ロットの仕事はなくならないと思った。即日や翌日には発送しなければならない仕事も、当社でできそうなものであれば基本的に断らない」と対応力が強みと説明する。

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主力の三菱電機のCO2レーザー加工機「ML2512HVⅡ」と鈴木真次代表取締役。もう少し小さい機体が出たらファイバーレーザー加工機へと買い換えたいと話す

近隣地域への新規の営業活動や情報発信を続けていく中、複雑な加工が必要な注文が増えてきたため、他社製の2次元ソフトから2016年にキャドマック製の3次元CADMACSheet-SEG5」へと乗り換えた。

「当社だと、自分で図面を描くことが出来なかったり、残しておけない会社からの注文も多い。MACSheet-SEG5にはドラフト機能があるので、図面を当社で保存しておくことができる。昔の図面があるからという理由で再度注文をいただくことも結構ある」

事業が拡大していく中、鈴木社長を困らせていたのが人員の問題だ。従業員の募集に人が集まりづらいだけでなく、従業員の定着にも課題があった。

「曲げ加工は仕事の約8割に発生するので最初から任せたいが、初心者には段取りや加工手順を頭の中で描くのは難しく、加工ごとに私が次工程を指示しなければならず、時には作業を見ていてもらうこともあった。私にとっても従業員にとってもストレスが多く、定着率の悪化につながっていた」

その状況を想像以上の働きで打破してくれたのがMacsheet-BEND。鈴木社長が作った加工シミュレーションを実機側でも確認できるため、従業員は図面番号さえわかれば、画面に出てくる情報の通りに金型を取り付けて、部材を曲げていける。導入してから1年半ほどだが、既に仕事の5割程度をカバーする300以上のプログラムを機械に入れ、従来であれば5年目、10年目のベテランに任せるような仕事を2年目の社員に任せている。

鈴木代表は「MACSheet-BENDがクッションとなって私が意図したことを従業員に伝えてくれるので、従業員は一連の作業をミスなく一人でできた達成感を得られ、会社にとっては誰にでも任せられる安心感と加工不良が出にくくなった」と導入メリットを話す。

■簡単な加工や熟練者も作業効率向上

MACSheet-BENDを導入当初、鈴木代表は曲げる回数の多い複雑な加工ぐらいにしか使わないだろうと考えていたが、使っていくうちに簡単な加工や熟練作業者にとっても有益だと分かってきた。例えば、1度直角に曲げるだけの簡単な加工であっても、90度を出すための圧力についての知識や経験が必要になるが、こうした加工は何度も先輩社員に確認しづらく、従来は各人が覚えておく必要があった。現在は簡単な加工もプログラムを作って機械に覚えさせているため、「従業員はもっと重要な作業に集中できる」と鈴木代表は話す。また、多い時には10回以上の曲げが必要な複雑な部材の加工は、曲げ加工に熟達している鈴木社長であっても段取りなどに時間がかかったが、事前の曲げシミュレーションによって、加工の可否を把握したうえで作業に取り掛かれるようになった。工程ごとに曲げる方向や角度、使う金型などを一つ一つ考えることなく、画面に表示された通りに段取りをすれば一連の流れで正しい加工を行えるため、飛躍的に作業効率が向上した。

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集光・反射板。中央から端に向かって順に5回曲げていく。半導体関連や水のろ過装置向けなど、様々なメーカーへ部品を納品する

メリットの多いMACSheet-BENDだが、問題点はないかと鈴木代表に尋ねると、少し間を置き、「今は私が正解を示し続けているので、従業員は失敗なく正解を積み重ねている状態。失敗から学ぶこともあると思うので、失敗をさせない弊害がどこかで出てくる可能性は考えている」と話し、人を育てるということの尽きることのない難しさを滲ませた。

(2023年3月25日号掲載)