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Opinion

タイ投資委員会(BOI) ソンクリン・プロイミー副長官

技術移転でタイの長期的な発展を目指す

――近頃のタイへの投資状況を教えてください。

「昨年は投資申請数がとても良好で、直近の数カ月も同様です。様々なグローバル企業がタイ政府の掲げる優先分野で多額の投資を発表しています。例えば、BYDはタイに年間15万台のEVとバッテリー製造向けの設備投資を進めていますし、Amazon Web Service3つのデータセンター設置とインフラ開発に数十億ドル規模の投資を今後15年で行っていくと発表するなど、既にコロナ後の投資が始まっており、明るい兆候と言えます」

――日経企業からの投資状況は。

BOI60年前に設立して以来、日本からの投資はタイの発展に大きく貢献してきました。実際、現在も日本が累計でタイへの最大の投資国であり、2022年の直接投資額(認可ベース)も日本が1位でした」

――新たに発行された投資奨励戦略について教えてください。

「新しい戦略はタイ経済のさらなる発展や競争力強化に向け、技術開発に主眼を置いています。特にEVBCG(バイオ・循環型・グリーン)、スマートエレクトロニクス、デジタル、クリエイティブの5つの優先産業に集中し、技術の高度化、産業のグリーン化・スマート化、人材開発そして、クリエイティビティとイノベーションといった手段で実現していきます。そのため、投資額ではなく、タイの長期的な成長や発展に繋がるかが判断のポイントとなります」

――A1+」という上位のグループも新設されました。

「新投資奨励策のもと、従来のA1~4Bとあったグループの上に新たに設けられたグループで、これまで以上に厚い恩典を受けられるものです。法人所得税の免除期間も最大で13年まで付与されますし、機械輸入関税と輸出用製品に使用される原材料の輸入関税の免除や、BOIやタイの政府機関からのサポートも用意していきます。コアテクノロジーとして、バイオテクノロジー・ナノテクノロジー・先端素材の3つを設定しており、そのほかにも川上の技術や製品を分類しています。この恩典を受けるためには教育機関との連携を通じて技術移転を行うことが条件となります」

――投資先国が多様化してきています。タイの優位性を教えてください。

「豊富な恩典はもちろんのこと、熟練したスキルを持つ労働者や裾野産業の原材料、整備されたインフラ、政府による支援などを投資先に求める場合、期待に応えられると考えています。また、全世界からの投資を歓迎する中立的な立場であることや、外国人材にとって比較的低コストで住みやすい住居環境を提供できる点もポイントとなると思います」

■継続・投資にも 恩典を用意

――日本からの投資に期待することは。

「これまでにも日系企業が投資を進めてきた自動車、電気・電子、化学、機械といった分野で、先を見据えた最新技術・設備への投資を期待します。例えば、EVや水素自動車、スマートエレクトロニクス、半導体、バイオ、化学産業におけるリサイクルなどです。今回の投資奨励策では新たに『継続・拡大プログラム』などを用意しています。継続的な投資をする場合や研究開発拠点をタイに移す、または、研究開発を伴うグリーン分野の製造工場や地域統括拠点をタイに設けた場合、様々な追加の恩典を活用できます」

――日本企業へ要望があれば教えてください。

「日系企業は非常に長い間、タイに投資をしていただいています。どのような産業分野でも日系企業が活躍しています。タイの現状や政策、経済を熟知しているため、日本企業同士のディスカッションで十分な情報共有ができてしまいます。そのため、タイ政府とのコミュニケーションにまで至らないケースが多くあります。これからは、個々の日系企業とのディスカッションを通じて、限定的なニーズであっても把握・サポートしていきたいと思っていますので、新たな取り組みをされる際にはぜひタイ政府にシェアしてもらいたいと考えます」

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(2023年3月25日号掲載)