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Opinion

(一社)フィジカルインターネットセンター・荒木 勉 代表理事

究極のオープンな共同物流、標準化の徹底がカギ

2024年問題をはじめ、物流業界は様々な問題を抱えている。そうした問題を解消するための取り組みや機器・システム開発が進められているが、目指す先が同じでなくては道に迷ってしまう。政府も昨年3月には持続的な物流の実現に向け、フィジカルインターネット・ロードマップを作成するなど、動きを加速させている。(一社)フィジカルインターネットセンターの荒木勉代表理事(上智大学名誉教授)に目指す先(フィジカルインターネット)について聞いた。 

――フィジカルインターネットの概要を教えてください。

「究極のオープンな共同物流」。つまり、業種・業態を問わず開かれたデータベースを活用したマッチングシステムと物流容器や荷姿が標準化した高効率な物流の仕組み。現在の物流はメーカーと卸、卸と小売りなどがそれぞれの企業間ごとの都合でルールを決めていたり、物流容器や荷姿が多様であるため、ドライバーの長時間労働や積載量が少ない状態(繁忙期も含め平均で4割)で輸送せざるを得ない状況になっている。

そうした問題を解消するため、ゆっくり届けてもいいのではという発言も出てきているが、私はできるだけものを早く届けるのも物流の役割だと思う。一方で、環境への配慮やコスト低減も物流の役割であるため、それらを両立するのにフィジカルインターネットが適している。商習慣の見直しやハードウェアとソフトウェアの標準化を徹底して、たとえ競合だとしても同じトラックに乗せられる仕組みが必要になる。

――各所で実証実験が進められています。

取り組みが進められることは大切だが、FLINE(食品5社共同出資の物流会社)であれば5社という小さな規模で閉じてしまっていないかと危惧をしている。フィジカルインターネット実現には、業種や業態、地域を飛び越えて共同で配送する必要がある。そうした先のことを視野に入れた検討がなされているのか、排他的な共同物流となっていないか精査する必要があると思う。

――マテハン機器メーカーが取り組むべきことは。

フィジカルインターネットでは今ある資源を柔軟にみんなで使っていこうとしている。限られたトラックに沢山の荷物を乗せるためには物流容器や荷姿の標準化も必須。ダンボールやパレットの大きさや形にいくつかの種類が出てくるのは仕方がないが、それを組み合わせれば一つの規格に沿った形になるもの。究極には通い箱を提案している。通い箱の大きさをパレットの大きさに合うように作れば、組み合わせ方で積載量を上げられるし、荷崩れも起きにくい。そのまま店舗に並べられるような形にすれば、棚出しの手間もなくなる。

物流容器や荷姿の標準品が決まったのなら、物流センター向けのマテハンシステムもそういうことを意識して、標準のものは必ず扱えるようにすることが大切になる。

――これからについて教えてください。

これまでのビジネスの仕方を変えてもらうのには、10年、20年かかってしまう。今から業種を越えた標準化の議論を徹底していかないと完全なものはできない。なので、2040年を目標にみんなで取り組もうと呼びかけている。私は30年を一つの目安にしていて、10年たてば現在の取り組みの一部が本格稼働している状況になるとみている。その効率の良さやコストメリットが分かれば、その後10年でかなりのところまでいける。

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フィジカルインターネットが実現する価値 

(2023年2月25日号掲載)