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Opinion

(一社)バリ取り・表面仕上げ・洗浄協会 北嶋 弘一 理事長

「人手不足を補う新たな技術提案を」

本年3月、加工における最終工程を担う分野に特化した一般社団法人「バリ取り・表面仕上げ・洗浄協会(BSC協会)」が誕生した。その初代理事長に就任した北嶋弘一氏(関西大学名誉教授)に、協会発足の狙いや今後の活動、現在の「後処理工程」が抱える問題点とその解決策について訊いた。

PROFILE
北嶋弘一(きたじま こういち)
1969年、関西大学大学院卒。1994年、関西大学工学部教授。2006年同大キャリアセンター所長、2007年にシステム理工学部教授を経て現職に至る。元砥粒加工学会会長。1999年精密工学会高城賞受賞。2001年砥粒加工学会技術賞受賞。2008年日本工学会フェロー授与など受賞歴多数。2023年春の叙勲にて瑞宝小綬章受章。

——北嶋理事長はこれまでも後工程の分野で研究組織を立ち上げ、金属加工分野に多大な貢献をしてきました。今回、新たな会を立ち上げた狙いをお聞かせください。

これまでバリ、エッジ、表面の品質と加工技術の研究を行う「BEST-JAPAN研究会」と「(公社)砥粒加工学会 バリ取り加工・研磨布紙加工技術専門委員会」において長年、会員諸氏と研究活動を行ってきましたが、両会の連携を深めることで、さらなる加工技術の高レベル化が図れると考え、新たにBSC協会を立ち上げました。

——現在、後工程において実際の加工現場からはどのような声が顕著に聞かれるのでしょうか。

後工程の分野も、やはり人手不足の問題がどこも深刻です。現在、日本のモノづくりは高機能、高品質へ完全にシフトしています。それに伴い、精密加工における最終工程のバリ取りや表面仕上げといった技術にも高いレベルが要求されるようになっています。

こうした技術は自動化で簡単にカバーできるものではありません。またロボットの活用に対しても、まだまだハードルが高いという声も多く聞かれます。多品種少量生産が進む中、ワークに合わせてロボットを活用しきれるのか、という不安があるからです。

——BSC協会の中には後処理の自動化に長けた会員企業も少なくありません。

加工で生じるバリは、大きさや形状も様々ですが、産業用ロボットを上手く活用すればかなりの部分を除去することが可能です。すべては取り切れませんが、人に任せる部分とロボットに任せる部分を明確にすることで、省人化、省力化に繋がります。

当会の会員企業の中で自動化を進めている企業は人のスキルとロボットの生産性を上手に活用して、生産性を高めています。またそれらの知見を惜しみなく外に発信しています。

■加工技術をオープンに

——自動化を進めていくためのキーポイントはどういった部分になりますでしょうか。

持続的なモノづくりを行っていく上で、新たな加工技術の開発や生産性向上に向けた企業努力が不可欠です。それを踏まえると、いずれの企業も積極的に自動化に取り組んでいく必要性があるのではないでしょうか。

昨今、画像認識の精度が格段に上がっています。またそれに必要なカメラやセンサ類も以前に比べて導入しやすい価格になりつつあり、当会ではこれらを活用した自動化を研究していきます。すでに当会会員にも、CAD/CAMとの連携で独自のバリ取り自動化を進めている企業もあります。

——他に仕上げ工程においてより研究を進めていきたい分野は。

積層造形の分野は後工程が必要なワークが非常に多く、造形物の素材によって仕上げ方法も多岐に渡り、まだまだ技術が確立されていません。欧米ではすでに3Dプリンタを積極的に活用したモノづくりが加速しています。この流れはいずれ日本にも波及すると考えています。そうした次代の仕上げ技術についても研鑽を深めていきたいと考えています。

——今後の協会活動についてもお教えください。

当会が主催者となり、バリ取り、表面仕上げ、洗浄に特化した展示会を定期的に開催します。すでに第1回「最上級仕上げ加工技術展」を開催させて頂きました。今後は都市部に限らず地方でも順次開催していきます。展示会では当会会員でなくとも、気軽に技術相談して頂けます。これまでのモノづくりは「技術=競争力」でしたが、当会は技術をオープンにし、皆様の加工に寄与できるよう活動を行っていきます。皆様の積極的な参加をお待ちしています。

(2023年7月10日号掲載)