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ファザーマシン2/Chapter9

とんこつ青年、無職になる

みなさん、こんにちは。工業系YouTubeチャンネル、なんとか重工のとんこつです。

今回は、いよいよ転職編のエピソード"前編"をお送りします!

前回の事件からまた会社に対する不信感が大きくなり、仕事にも身が入らなくなってきた頃。ケロさんから、今の会社を退職するという意向を聞かされました。

営業さんが持ってきたステンレスの材料…旋盤が壊れます。

ケロさんは入社から半年ほどでしたが、社会人経験のある彼からすれば、会社の状況が好ましくないことは明白だったのでしょう。訓練校からの友人も失い、尊敬できる仲間も失い、人と働くことが好きな私にとって絶望でした。

会社の人たちはとても優しく、特に師匠お二人には大変お世話になったので、辞めたくはなかったですが、1度きりの自分の人生なので、私も辞める決断にいたりました。

? それだけで辞めるの? と思った方もいるかもしれませんが、他にもビックリするような謎エピソードがたくさんあります!

例えば、ある日工場の前が騒ぎになっていて見に行くと、約1㌧のステンレスの材料がありました。

どうやら営業さんが取ってきてくれた新規の仕事で、師匠に「〇〇さんだったらできますよね?」という明らかに技能関係なく普通旋盤がぶっ壊れるような仕事を……さすがの師匠も「こんなん機械めげる(壊れる)」と、ピシャリ。

ケロさんと新しい内径バイトが欲しいと話をしていたら、絶対使うことのないマシニング担当の工場長が、商社さんから買った新しいバイトを隠し持っていて、急にしれっと渡してきたり。ケロさんがおやつに食べようとして工場の冷蔵庫で冷やしていたキットカットを、師匠がまるで自分のものかのように皆に配り出したり(いまでは笑い話です)。

そんな訳で1年半育てていただいた会社を去り、3年ほど住んでいた家も解約し実家に寄生しながら、ゆっくりと次の仕事を探そうとしていました。

この世界に入ってからは、よく父と仕事の話をするようになっていたので、長期休暇で実家に帰ったときには、仕事や会社の悩みなどを相談していました。もちろん辞めたいと言ったときは反対されました(笑)。

ケロさんはというと愛知県で再就職しつつも、私のことを気にかけてくれていたようで、私の地元近辺で「こんな会社どう?」と、わざわざHPを送ってくれるなど、短い付き合いだったのですが、離れ離れになってからもとても親身にしてくれました。

■引く手あまたの旋盤工!

1~2ヵ月ほどニート生活を満喫し、ハローワークへと足を運びます。ハローワークの雰囲気は苦手です。全然ワクワクしませんし、『働かなければ生きていけない』ということを改めて思い知らされるからです。

せっかく新しい職場、仲間と出会うわけですからそんなに堅苦しくなくていいのでは?

などと考えている内に私の番になりました。できることはただ1つ、普通旋盤です。しかし、このたった1つのスキルが、製造業においてとても重要視されており、どれだけNC化が進んでも普通旋盤にしかできない、やりたくない仕事というのがあります。

今でこそ人手不足だと騒がれていますが、旋盤工は当時から引っ張りダコでした。理由はやりたい人がいない点で、特に若手の人材が不足しています。ですので、若くして旋盤が少しできるというだけで、就職難だろうが、リーマンショックだろうが、仕事には困りません。これがまさに「手に職を付けろ」と父が私に勧めてくれた道です。

さて、皆さんは会社選びで、どこを重視しますか? 将来性、ビジョン、規模、内容、人、お金、福利厚生、教育、距離、などなど、一言でブラックやホワイトと言ってもいろいろありますよね。

次回は転職編の後編です。お楽しみに~

20231010日号掲載)

工業系YouTuber【なんとか重工】とんこつ
工業系YouTubeチャンネル【なんとか重工】を、相方のケロと2人で運営。旋盤やフライス、マシニングに溶接機、3Dプリンターなどを活用して自分たちが作りたいモノを作るチャンネル。登録者数は11.9万人(2023年9月28日現在)