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ジダイノベーター Vol.11/テスラを追い越せ、自動運転EVメーカー目指す

Turing、自動運転車を初納車 25年に100台EV製造販売

「テスラを追い越す」、壮大な目標を掲げ、完成車メーカーを目指すスタートアップ企業「Turing」。2025年に100台、30年に1万台の自動運転の電気自動車(EV)の製造・販売を目標に掲げる。その第一歩として3月3日、自社開発のAI自動運転システムを搭載した「THE FIRST TURING CAR」の納車を行った。

2030年に量産を目指すEVのコンセプトカーイメージ

レクサスRX450h(ガソリン車)をベース車両にしているものの自社開発したAI自動運転システムとオリジナルエンブレムを搭載した最初の一台をエンドユーザーに届けた。エンジニアの柳沼秀龍さんは「レクサスの車載ネットワークに当社AI自動運転システムを組み込んだ。われわれはカメラを使い、人間が見て考えるのに近いことをAIが行う」とする。特殊なセンサーなどを用いず、フロントガラスに取り付けられたカメラで読み込んだ画像データから、白線や前走車をAIが検知・判断し車両を操作。「カメラはコストも低く、今後はカメラベースのシステムが主流になると当社は考える」(以下柳沼さん)とする。

次のマイルストーンは25年にゼロベースで100台の自動運転EVを完成させることだ。そのため、延床面積1879平方㍍の車両生産拠点「TURING Kashiwa Nova Factory」(千葉県柏市)を新設した。車両製造の実績がない同社にとって、多くのサプライヤーの信頼と協力を得て一台を完成させるのは並大抵ではない。「国内だけでなく中国なども当たって徐々に調達のめどがついてきた」が「モーターから椅子まで、何から何まで必要。バッテリーも手こずっている。この紙面を見られたサプライヤーからの提案大歓迎だ」と笑う。

■超高級車ではなく多くの人に届く車を

最初のEVの設計思想は、シンプルさと安全性だ。『安全』こそが既存の完成車メーカーが長年培ってきたレガシーである、とのリスペクトが同社にはある。「30年の1万台生産販売の時点で『日本で普及するもの』にしていく。それは超高級車ではなくより多くの人に届く車でありたい。自動運転ではレベル5を目指す」とし、中間目標の100台は、安全重視で奇をてらう車にはしない。「しかし、『未来の車ってこういうもの』というワクワクも感じさせるデザインにし、運転の概念を変える、人とコンピューターのインターフェイスを搭載する」とも話す。現在の自動運転は人間の直感と乖離しており「なぜ減速したか」「なぜこの角度で曲がったか」がわからず不安になる。AIが「どう考えて運転しているのか」を表示して人に安心感を与える機能も追加予定だ。

バックグラウンドがソフトウエア開発で、ハードウエア、とくに自動車製造の経験があるエンジニアが少ない。苦労も多い半面、自動化が得意という利点もあり「今まで当たり前とされていたものを、プログラムでやってしまうことや、必要なシミュレーションを内製できる」強みもある。

自動運転EVの完成まで現在何%のところまで来ているか、と問うと「1%だ。動くものを作り、テストして保安基準に適合し、安全を確認し製造し、販売する。アフターサポートも必要だ。やるべきことだらけ」としつつ「今がほんとに楽しい」とエンジニア冥利に尽きる様子だった。

2023410日号掲載)