日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として半世紀を超す実績。
日本物流新聞社のWEBサイトでは、
ものづくりを支える工作機械、工具、ロボット、産業機器等の情報から、
ハウジングはじめ住まい・暮らしの様々なニュースをお届けしています。

検索

連載

連載

けんかっ早いけど人が好き Vol.46

内閣府への坂道

3年ぶりに地下鉄の溜池山王駅に降り立った。内閣府に行くときに使っていた駅である。SIP(戦略的イノベーションプログラム)自動運転推進委員会の会議に出るため、毎月3、4回のペースで通っていたが、3年前からコロナの影響でリモート会議になりずっとご無沙汰だったのだ。会議室とリモートのハイブリッド会議になったこの春、SIPも9年間の活動が終わるため最後くらいはと内閣府に向かったわけである。

坂のてっぺんに首相官邸入り口があり警察官が密集している。

駅を出てすぐある坂を上がりきり交差点をわたったところに内閣府があるのだが、実はここ、右側は首相官邸、左側は衆議院第一議員会館という場所。ゆえに警備体制は厳重で、大勢の警察官やパトカーが待機している。そして、この6年間、私がこのあたりを歩いているとなぜか幾度となく警察官に呼び止められた。

「どこに行くんですか」

内閣府ですけれど?

そう答えると、警察官が私のことを上から下まで不躾にジロジロとチェックする。その顔は、こんなおばさんが内閣府に用事があるわけないだろうと言わんばかりだ。喧嘩売ってんのか、おい、と言いそうになっていると、警察官は、あわてて明るい声で、

「みなさんに聞いています」

という。しかし、私は知っている。みなさんに聞いていないことを。だって何度もこの道を通っているのに、そんなの一度も見たことないんだもの。毎回、警察官は違うのになぜ私だけ。つまりそれは、私の風情や雰囲気が彼らの何かを刺激するということで、どれだけ怪しい雰囲気を醸し出しているのだ、私は。

さてそんなこともこの3月で終わりである。コロナの3年の間に、近くに建設中だった高層ビルが立派に完成していて時間の流れを痛感したが、内閣府の受付用の小屋はそのままだった。私の基本ポリシーは次の世代によいものを残すなので今後のために、雨の日に長蛇の列ができてつらいこの小屋の改善要望を出したのだが、3年たっても変わらず残念である。

というわけで私の内閣府詣でも終了する。でも、またなにかの機会でこの道を通ったら、警察官に呼び止められるんだろうな。だけど、呼び止められるような不穏なオーラをまだまだ出し続けたいとも思うのである。

2023410日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)