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VOLTA、バッテリー活用をリサイクルで支える

レアメタルの資源循環を目指して

持続可能な社会を目指し、全世界でEV活用が加速している。それに伴い、車載用リチウムイオン電池・バッテリー(LiB)の製造・開発投資が急増しているが、正極板に使用されるコバルトの供給量問題や使用済みLiBの処分問題など、現状のまま行くと持続可能とは言い難い状況が出てきそうだ。

素材の投入後の粉砕、選別作業は独自のシステムにより自動化している

LiBの再資源化に向けた取り組みを進めているのが静岡県富士市に本社を置くVOLTAだ。資源循環事業などを手掛けるエンビプロ・ホールディングス(東証プライム上場)の100%子会社で、小型充電式電池のリサイクルシステムを運営する(一社)JBRCの再資源化の委託先(全国に5拠点)にも選ばれるなど、電池リサイクルのプロフェッショナル。VOLTA・代表取締役社長の今井健太氏は「液系LiBには火災のリスクが常に伴う。当社はエンビプロ・ホールディングス基準の高い管理体制の下、適切に電池を処理し、再資源化を進めている」と話す。

LiBはセパレータを介して、負極と正極の間をリチウムイオンが移動することで充放電を行う二次電池だが、その寿命は610年ほどと言われ、2030年ごろに処理需要が本格化するとみられている。そのため、回収量の少ない現状、リサイクルを事業化するのは難しいと一般的に言われている。同社は既に負極板からは銅とカーボンを、LiBや正極板からはブラックマス(レアメタルであるコバルト・ニッケル・リチウムの濃縮滓)を回収し、素材ごとに販売するシステムを構築。今井氏は「国内では他の産業廃棄物と同じように焼却による適正処理が一般的。当社は資源リサイクルの観点から、LiBを適切に解体した上で、細かく砕き、素材ごとに分離回収している。希少な資源であるブラックマスを無駄なく回収し、販売することで売り上げにつなげている」と話す。

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製錬後のブラックマス

■ブラックマスの再資源化へ

現在、月に100㌧ほどの電池を処理しているが、処理施設の能力は150~180㌧ほど。その処理能力を超えるのは1~2年と見ている。

「現在は車載用バッテリーの生産工場から排出される不良品の処理が半分ほどを占めている。国内でもEVの生産が本格化してきていることもあり、処理が必要なリチウムイオン電池の発生量が増えてきている。20年代後半には自転車用やポータブルバッテリーの処理が、30年代中ごろにはEV搭載用バッテリーの処理が本格化していくとみている」

国内では先進的な取り組みにも思えるが、今井氏は「電池リサイクル産業をリードする中国や韓国からは遅れをとっている」と話す。同社の試算で国内よりも20倍以上のバッテリー処理需要が既にある中国では、ブラックマスをコバルト、ニッケル、リチウムへと製錬する技術を確立している。そのため、同社で回収したブラックマスは国外へと輸出している現状がある。そうした状況を打破するため、昨年12月にはブラックマスからレアメタル製錬技術を確立・事業化に向け、三菱マテリアルとの湿式製錬技術の共同開発へと着手したことを発表するなど、動きを加速させている。将来的には、LiBの処理から材料の安定供給まで一貫したLiB to LiBのクローズドループリサイクルシステムの構築を目指す。

今後の取り組みについて今井氏は、「24年頃をめどに茨城県で第2ブラックマス生産工場を稼働させ、その後もブラックマス生産工場の横展開を進めていくとともに、ブラックマス製錬においても国際的な競争力を持てるような取り組みをしていく」と話す。

(2023年4月10日号掲載)