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ファザーマシン2/Chapter8

Gコード手打ちの苦行

みなさん、こんにちは。工業系YouTubeチャンネル、なんとか重工のとんこつです。

今回は、社会人奮闘編をお送りします。

懐かしの母校でケロさん&恩師と機械加工をしました

ケロさんの最初の印象は、6歳も年下の私が言うのも変ですが、真面目な好青年でした。

入社が決まり、旋盤部門で一緒に働くことになったのですが、私にとっては初めての後輩?で、しかも絶対自分よりできる人に教えるという謎の状況でした。

しかし、職業訓練校のT先生とM先生の教え子である私たちはすぐに打ち解けることができました。しかもケロさんはバイク乗りで、バイクに関する知識がとても豊富。私もちょうど、アドレスV125という通勤最速バイクが納車されたばかりで、当時からバイクのカスタムなどでお世話になっていました。

アドレスのカスタムを手伝ってもらうため、ケロさんのご実家に伺ったとき、部屋の中で驚くべき光景を目の当たりにしました。初めて女の子の部屋に入ったとき、やっぱり女子だなーと言う感想が出てくると思いますが、そこは男子! 今まで見たことのないゴリゴリ工業男子の部屋でした。

たくさんの工具箱。卓上旋盤はもちろん、自分でCNC化したというCNCフライスまでしかも、そのCNCフライスは、重さで床が抜ける恐れがあるので、自ら床下に潜り補強をしたとのこと。

「こりゃとんでもない人が入社したな」と心の中で思いました。

ケロさんが入社してから2ヶ月が経った頃、大きな仕事が決まり忙しくなりました。特にNC旋盤は多忙で、工場長が手伝いに回るほどでした(普段はマシニング担当)。生産性を上げるため急遽会議が開かれ、さまざまなアイデアが出ましたが、結局何も決まらずに終了。

しかしその翌日、大きな事件が起こりました。 

唯一のNC旋盤担当者が突然辞めてしまったのです。

■プログラムを全消去!

納期はどうする? NC旋盤の担当は? 引き継ぎは? 彼が辞めるような素振りを見せていなかったため、社内は大混乱。そんな中、工場長がケロさんに「NC旋盤できるか?」と尋ねました。

ケロさんは、この言葉をずっと待っていました。

というのも、ケロさんは入社当初からNC旋盤がやりたいと言ってたのです。しかし、この会社では良くも悪くも普通旋盤の大師匠がいるため、NC旋盤よりも普通旋盤の方が重要視されており、触らせて貰えませんでした。そしてこの状況になってからのヘルプ要請に、少なからず憤りを感じていたと思います。

ケロさんはGコードを解読し、機械のマニュアルを家に持ち帰って勉強。私も何か手伝おうと別のNC旋盤の操作を試みますが、盛大にやらかしてしまいました。なんと、機内のNCプログラムを全消去してしまったのです。

もちろんバックアップなどはなく、ただただ平謝りするしかありません。ケロさんには「逆に吹っ切れた」と、笑って許してくれました。

その後は2人で会社の愚痴を言いながらもなんとかしようと奮闘していました。あーでもないこーでもないと言いながらGコードの手打ち。ちなみに手打ちの恐ろしさはやったことがある人にしかわからないと思います。“+-”を付け忘れただけで機械がワークに衝突してしまいますから。

この頃からケロさんの仕事に対する真摯な姿勢は本当に素晴らしく、どんな困難な状況でも最善を尽くしていました。それは彼がYouTuberとして活動するようになっても全く変わらず、私が彼を尊敬している部分の1つです。

次回は、我慢の限界!転職編です。お楽しみに~

2023930日号掲載)

工業系YouTuber【なんとか重工】とんこつ
工業系YouTubeチャンネル【なんとか重工】を、相方のケロと2人で運営。旋盤やフライス、マシニングに溶接機、3Dプリンターなどを活用して自分たちが作りたいモノを作るチャンネル。登録者数は11.9万人(2023年9月28日現在)