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築63年「昭和の木造アパート」アトリエ併設の賃貸住宅へ

第40回住まいのリフォームコンクール

住宅リフォームの普及促進とリフォームの水準向上を図ることを目的として、全国各地で施工された住宅リフォーム事例を募り、優秀な事例を表彰する「住まいのリフォームコンクール」(主催:〈公財〉住宅リフォーム・紛争処理支援センター)。

節目となる40回目の開催には300件超のリフォーム事例の応募があり、「住まいのリフォームコンクール審査委員会」(委員長:松村秀一 早稲田大学 理工学術院総合研究所 上級研究員・研究院教授)による審査の結果、上位賞7作品を含む入賞30作品が選出された。

最上位の賞となる国土交通大臣賞を受賞したのは、「築63年木造賃貸アパートの再生 tede」(設計:アッドスパイス+村上康史建築設計事務所/施工:椎口工務店)。

同物件は京都市内の古アパート。施主が表層の改修だけでは近隣の賃貸市場での競争力に欠けるのを懸念していたところ、不動産プランナーや設計者と協働することで周辺のニーズを掘り起こし、大胆なリフォームを行うことで魅力的な賃貸物件に生まれ変わらせた。

ニーズの掘り起こしとして、物件の近隣に芸術系の大学があることからアトリエ併設の賃貸住宅を企画。居住用の部屋を2階に限定し、1階を貸しアトリエ数戸と共用のラウンジにすることで、木造アパートの弱点である遮音性の低さをカバーしながら、一般居室以外にも魅力ある特徴的な空間を実現。1階の中央に配置されたラウンジは2階の居住者も利用できるようになっており、入居者同士の交流やイベントを行えるスペースとした。

ハード面でのリフォームは、住宅医でもある設計者がインスペクションを行い、それに基づいた適切な耐力壁配置と、スケルトンリフォームによる耐震補強を実施。さらに開口部には樹脂複合サッシを採用し、防火性や断熱性の格段の向上と適法化が図られた。

2階の住居スペースは、面積が限られているため、シャワー・ブースを新設するにとどめ、居住者がそれぞれの使い方を工夫できる土間スペースを設置。ワークスペースとしても活用できるようにした。

施主によると、「物件の魅力を理解してもらえるよう、入居者は芸術系大学の学生や関係者等を募集する形をとった。約15 年で投資は回収できる計画」という。

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(2023年9月30日号掲載)