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扉の先74/KUKA一途にロボット切削を探究

インフィニティソリューションズ、CAD/CAM開発のノウハウ生かす

レンガの壁に囲まれ、長さ2㍍以上の一枚板のテーブルがでんと据える。窓際にはカウンター席が配置され、落ち着いた洋楽が流れる。どう見てもバーだ。一杯飲みたくなりますね、と感想を漏らすと「本当に飲めますし、飲みに来られるお客様もいらっしゃいます」とインフィニティソリューションズ(長野県上田市)の小山田聡社長は部屋の雰囲気にあった渋い声で言う。バーのマスターにもなれそうだ。

同社はロボットSIerCAD/CAM開発・販売、射出成形用金型の製造と3つの事業を展開する(金型製造は中国・東莞市の合弁会社が担う)。昨年10月に本社の奥に2階建てビルを増築。冒頭の飲食できる商談スペースやセミナールーム、シミュレーションゴルフ室をもち、訪問客にはゆったりした気分に浸ってもらえる。

「多くのお客様に来ていただけるよう思い切って増築した。また当社に若い社員も増え働きたいと思ってもらえる職場にしたかった」と小山田社長。一般的な中小企業とずいぶんと様子が異なるのはオフィスの雰囲気だけではない。社員の給与は年齢によらない年棒制。「力のある社員が多くもらえます。私なんて新しい発想がないので、若い人の指示に従って汗かいて動いてますよ」。

ロボットSIerとしての同社の特徴はKUKAロボットを専門的に扱うこと。2017年にKUKAオフィシャルパートナーとなり、22年には日本で最も多く販売したパートナーに贈られる「BEST PERFORMING SYSTEM PARTNER 2022」をドイツに招待され受けた。KUKAの魅力は何か。

「軌跡および繰返し位置決め精度と剛性の高さに惚れた。それにNCデータで動かせるのでCAD/CAM開発で培ったノウハウをそのまま生かせる」

力覚センサーでバリ取り極める

同社はその特長を切削・バリ取り加工に生かそうと、21年にKUKA6軸ロボット、三共製作所のロータリーテーブル、スギノマシンのスピンドルを内蔵するロボットマシニングセンタ「INFINITY KATANA」(繰返し位置決め精度±0.02~0.06㍉)の販売を始めた。7軸制御により一般的な多軸加工では入り込めないワークの奥まった部分に刃物が届く。機械幅2㍍ほどと小型ながら1500万円以上するが、金属部品のバリ取りや食器研磨向けに人気があり、昨年は33台販売した。

今のところバリ取りはメカ式のバネの付いたスピンドルで行うが、「倣う方法ではバラツキが出やすく、削りすぎることもある」弱点がある。そこで新東工業の力覚センサーを利用したより細かな制御を共同開発しており一定の成果が出はじめた。「溶接で生じるビード、ダイカスト製品のバリ、射出成形したプラスチックのバリ。これらすべてに共通して対応できる」と期待を寄せる。

バリ取りにそれほどの魅力があるのだろうか。

「市場があるのでバリ取り・研磨を極めたい。モノを加工すると必ず出るバリはベルトサンダーなどを使って人が手作業している。その作業者は人口減で減っていく。新潟・燕三条の洋食器磨きにも貢献できる」

(2023年6月10日号掲載)