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扉の先77/100万円からの6軸協働ロボが拡大中

可搬重量2㌔、6軸でリーチ660㍉のドイツ製協働ロボットが、100万円程度で導入できる。内蔵型コントローラの価格も含まれており、さらに教示やシミュレーションができるソフトウェアも無料だ。ドイツに本社を置く樹脂部品メーカーのイグスは、この明快な特長を備えた協働ロボ「ReBeL(リベル)」をはじめとする低価格の自動化製品(ローコストオートメーション、通称LCA)で、国内での存在感を高めつつある。日本法人の吉田剛社長は「LCAの本格的な拡販を進める段階に入った」と見て、人員を増強するため採用活動を急ぐ。

樹脂製6軸協働ロボ「ReBeL」は約100万円の導入が可能

イグス、手の届く価格の自動化をあらゆる分野へ

リベルには先述の6軸以外に、4軸や小型の5軸仕様など複数の機種がある。ちなみに4軸の価格は「数十万円」(吉田社長)と、6軸よりさらに安い。安さを謳う協働ロボットも増えてはきたが、それでもリベルの数倍はするため競争力はかなりのものだ。日本での本格展開は今年からだが、業種を問わず多くの引き合い・受注を獲得している。

なぜここまで低価格を実現できるのか。吉田社長は理由のひとつに開発思想を挙げる。「そもそもイグスは『Tech up, Cost down(技術を上げてコストを下げる)』という標語を掲げており、できる限りシンプルにお客様の希望を実現することを重視します。誤解を恐れず言うなら、速度や精度に「過剰」なスペックは不要だという視点。他社のロボットとは発想が異なります」

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吉田剛社長

リベルの動作速度は最高毎秒200㍉で、繰り返しの位置決め精度は±1㍉。シビアな精度やタクトを要する現場には向かないが、逆にそれ以外の用途では活躍が見込める。飲食店で飲み物を給仕するなど、価格がネックとなりやすいサービス分野での導入も現実的だ。

■軽さを活かし天吊りも

リベルの性能を詳しく見たい。射出成形で作られた樹脂パーツで構成され、本体重量8.2㌔と軽い。自己潤滑性のある独自の樹脂を採用しており、摺動部への給油は不要でメンテナンスフリー。各軸には樹脂製の波動歯車をモジュール化したギヤボックスが組み込まれ、摩耗してもモジュールごと簡単に交換できる。LCA事業担当の藤井航平氏は「我々が元々提供している素材や製品を組み合わせて最終的なロボットを完成させたイメージ」と説明する。

気になる教示方法だが、これもシンプルだ。無料公開する教示ソフト上にロボットを3D表示し、いわゆる「ドラッグ&ドロップ」に近い操作で感覚的に動作を組める。同じソフトで導入前の動作シミュレーションも可能。藤井氏も「Excelを使い慣れた方なら12日で使いこなせる」と言う。

日本でのLCAの展開は緒についたばかりだが、特に価格で他を圧倒するリベルはすでに大きな注目を集める。軽さを活かしてAGVや走行軸の上に搭載したり、天井強度を気にせず天吊りして外観検査に用いるなど使い方は様々だ。さらにリベルは「ROS」と呼ばれるロボット開発用のオープン型ソフトウェアプラットフォームに対応。「ROSでシステム全体を構築したいと考える開発現場では、価格も相まって重宝いただけるはず」(藤井氏)とする。 吉田社長はLCA事業を「最もポテンシャルがある事業」と位置付ける。リベル以外にパラレルリンクロボットやガントリーロボットも展開し、成長の起爆剤とする構えだ。

20231110日号掲載)