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テクニカン、冷蔵のおいしさを冷凍で

配送頻度さげ物流ひっ迫解消を

大手コンビニで、冷凍の刺身が売られているのを見かけて驚いた人も多いだろう。テクニカンが開発した「凍眠(とうみん)」技術がそれを可能にした。

2024年問題が目前にせまり、将来的にはサプライチェーンにおいて「冷蔵品」を毎日運送する事自体が困難になるとも言われる。冷蔵のおいしさと冷凍の長期保管性を兼ね備えた「凍眠」が物流のひっ迫解消につながるかもしれない。

凍眠装置

冷蔵品として頻繁に配送していたものを、2日に1回、ないし3日に1回の配送で届けられれば、配送頻度を減らせる。また冷蔵と同じおいしさなら朝届いても、夕方届いても鮮度が変わらないため時間指定の定期便を使用しなくても、比較的フレキシブルな物流管理も実現できる。

通常の冷凍は低温の空気によって凍らせるが、凍眠はマイナス30度のアルコールに沈めて素早く凍らせる技術だ。食品内部の水分が大きな結晶になりやすい最大氷結生成温度帯を速く通過させられる。「温度ではなく速さが重要だ。スピード凍結をするには『熱伝導』が肝要となるが、液体は気体よりも熱伝導率が約20倍も高いため、素早く熱交換をすることが出来る。正反対の例だが90度のサウナには入れるが90度のお湯に指は漬けられない」(山田義夫社長)と話す。またアルコールに液流を作り出すことで凍結スピードを上げている。

空気を媒体にした冷凍(緩慢冷凍) では、細胞内の氷の結晶が100から200ミクロンほどになるが、凍眠なら5ミクロン以下に抑えられ組織が破壊されにくい。

山田社長は「例えば肉を冷凍して解凍して、それを10回繰り返してもドリップは出ない。氷の結晶で細胞を壊していないからだ」と自信を見せる。

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シラスなども生のような新鮮度を実現

■船便でも新鮮な肉・魚が運べCO2削減に

同技術を開発して30年以上たつが、一気に普及することはなかった。「大量生産・大量消費の時代では、冷凍が多少素材の味を低下させたとしても、大量生産における調味技術によって十分マスキングできてしまう」(津田谷英樹広報課長)と話す。

また、差別化できる技術として、業界では同社の設備を使っていることを隠す傾向があったとし、大きな広がりを見せなかった。数年前に、約60㌢四方のコンパクトな液体凍結機「ミニ凍眠」を発売。これは飲食店やECサイト向けで、コロナ禍での内食需要拡大や、高級冷凍食品のニーズ拡大で大きく出荷を増やした。

元々は80年代の外食の急拡大で、冷凍物流がひっ迫したことをうけ、冷凍の『速さ』を追求して生まれた技術。再び物流問題が首をもたげ、注目が集まる。「冷凍の肉や魚は、多くの場合、冷蔵や半冷凍で大きな冷凍倉庫に集め、24時間かけて凍らせている。それでは物流がパンクしてしまう。生産現場で速く凍らせて出荷することで物流の適正化に寄与できる」(同社長)とする。

「輸入輸出も変わる。肉や魚を空輸していたものを、凍眠なら船便で一か月かけて運べる。二酸化炭素の排出も少なくできる。世界規模で物流を変えるために機械の輸出にも力を入れたい」(同社長)と夢は大きい。

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凍眠技術で製造された商品

20231110日号掲載)