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連載 扉の先〜自動化時代の挑戦者たち

扉の先42/扱いにくいバラ積みを高速ピック

【アラインテック】「ピッキングできないモノなくす」

積み重なった突起のあるコネクターに適度な振動を狙いすまして与え、バラしてピッキングする。毎分60ピックは1秒間に1個拾い上げるペース。絡まりやすいバラ積みワークであることを考慮すると相当速い。

最適な打撃と振動を与える「アラインピッキングDF」

そんな世の中にない高速仕分けピッキング装置「アラインピッキングDF」を開発し、今年9月の名古屋機械要素展で披露したのはロボットSIerでもあるアラインテック(旧旭興産、山口県岩国市)だ。上田文雄社長は「極力、ピッキングできないものをなくしていきたい」と装置を開発した理由を話す。同社は売上高の67割を占める機械事業と、34割のプラント事業で構成。機械事業は岩国市、光市、岐阜県不破郡に計3工場をもち、ロボットを含む製造システム、医療機器装置などを組立生産する。国内の大手企業向けを中心に1千万から2億円のシステムを年に20ほど納める。

バラ積みワークに対応した製品として、まず昨年7月に毎分90ピックを誇る「アラインピッキングHS90」を開発した。ワークを2Dカメラで捉え、バイブレーターでワークを振動させて分離した後、ピッキングエリアに移動させて拾い上げる。スピードは申し分ないが、チューブや板物など絡まりにくいものに向く一方、突起のあるコネクター類や滑りにくいものには不向きだった。

そこで開発したのが冒頭の「同DF」だ。「扱いが難しいことから諦めていたモノを2Dカメラで捉え、アルゴリズムに従って狙った場所を打つ。バネのようなとりわけ絡まりやすいものでも中央部を叩くことでバラせることは確認済み」(上田社長)という力作だ。その秘訣は4隅の固定バイブによる振動と移動型バイブをもつこと。

3Dカメラで捉えてバラ積みワークをピッキングする装置は世の中にある。だが、「大手ロボットメーカーと同様、私どももかつて取り組んだがそのやり方では時間がかかり過ぎる。1つ取るのに510秒かかっていては実用にならない。とりわけ小さなワークでは」と言う。

生産ラインに拘らず共同開発へ

同社は従来、大手電機メーカー向けの液晶ガラス基板の搬送装置を中心に手がけ、売上全体の4割を占めた。たがこの仕事はリーマンショックで激減。そのため独自の自動化装置を開発し、食品・半導体・建設・自動車産業向けにとターゲット領域を少しずつ広げてきた。バラ積みピッキングが生かせる生産ラインの入り口と、効率的なパレタイジングが求められる出口に注力する。

近年は共同開発型製品の要求が増えている。半導体向けはメンテ・組立工程が、食品向けは出荷工程の自動化が求められ、人手不足からビルの建設関係でのニーズも多いという。「生産ラインの改良だけでなくそれ以外の設備や、お客様がやろうとしてもうまくいかなかった製品の開発要求などに応えようとしている」。ただ、これらにはかなりの開発費がかかるので、「数が出ないと難しいが」と付言する。