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連載 扉の先〜自動化時代の挑戦者たち

扉の先81/通貨処理機メーカー発「8軸ロボット」

ローレルバンクマシン「ホワイトオーシャン」見据える

昨年12月に開催された国際ロボット展において、一風変わった動きで注目を集めていたのがローレルバンクマシンの8軸多関節ロボット「xLobomo(クロスロボモ)」だ。

国際ロボット展で注目を集めたクロスロボモ

同社・次世代第2研究所の中西秀行所長は「ロボット展はユーザーニーズを深耕する狙いで出展したのですが、これまでに無かった動きという点が評価されたのか、会期終了後は多くの反響を頂き、一時は仕事にならないほどでした」と嬉しい悲鳴を上げる。

従来の6軸垂直多関節ロボットは、人間で言えば骨に該当する「リンク」と同じく関節にあたる「ジョイント」の組み合わせが基本構造。肘や肩など自由に曲がる部分がジョイントで、その間を繋ぐ骨の部分がリンクとなる。これを動かす原理は人もロボットも一緒だ。

一方、8軸の「クロスモーション構造」を採用しているクロスロボモは、2つのアームの交点に回転軸を設けることで、多関節ロボットが持つ複雑な動きと、スカラロボットが持つ直動的な動きを両立した。

「クロスモーション構造は先日、一発で特許が認可されました。ロボット業界も日進月歩の進化を続けていますから、この数十年のうちに誰かしら同じようなアイデアを出しているだろうと思っていましたので、びっくりしました」

こう語るのは、クロスロボモ生みの親、同社次世代第2研究所の繁田知秀シニアエキスパート。大手製造業から理化学研究所まで、数々のモノづくり現場に携わってきた「鬼才」が続ける。

「一般的な多関節ロボットは、特異姿勢の問題がありますが、スカラロボット的な機能も備えるクロスロボモは、アームの自由度が高く、本体の根本付近にあるワークや棚の奥にあるようなものでも簡単に取れます。少ない動作で作業が行えるので、ティーチングの手間も省けます」

クロスロボモの制御システムは、繁田氏がゼロベースから構築。ティーチングシステムも直感的・視覚的なものを開発した。

「私も実際に6軸多関節ロボットを使ってきた経験がありますので、出来るだけ簡単かつ直感的に使えるようにしています。実際にロボットをセッティングするロボットSIerさんから初心者の方まで使いやすいシステムに仕上がっていると思います」(繁田氏)

■早期販売を望む顧客も

クロスロボモは今後、さらなるブラッシュアップを行い、早ければ今年度中の正式リリースに漕ぎつける見通し。だが「早く販売してほしい」という声も少なくない。

「例えば、中小の加工業者様で6軸ロボットの導入を検討したが、工場内が狭いから3台しか入らない。コンパクトなクロスロボモなら5台は入れられるからぜひ、といったお客様もおられます。私共としては今後サプライヤー様との連携も含め、スループットを向上させていかなくてはならないと考えています」(中西氏)

一方、ロボットメーカーは多士済々。新規参入のハードルは低くない。しかし、クロスロボモと同社が見据える先は明るい。

「当社は毎年、顧客向けに展示会を行っていますが、クロスロボモを出展したところ、大きな反響を頂いています。当社顧客の多くはお金を扱う現場ですから、ヒューマンエラーは出来るだけ避けたいと考える向きも少なくありません。そうした現場など、従来ロボット活用を考えていなかったようなところにも、クロスロボモを訴求していきたいと考えています」(中西氏)

「目指す先はブルーオーシャンですね…」というこちらの言葉を遮り、繁田氏は「ホワイトオーシャンですよ。何の色も付いていない海を当社の色に変えていきます」と、笑顔で意欲を語ってくれた。

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(2024年3月10日号掲載)