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キーエンス、インクリボンのいらない包装フィルム用プリンタ

環境負荷低減とライン生産性UPに

最近、食品の賞味期限表示などの印刷で黒ではなく、グレーのものが増えていることに気づくだろうか。これはキーエンスの食品包装向けプリンタが導入を増やしているからだ。FP―1000シリーズは、フィルム表面にインクを転写する従来の方式とは異なり、UVレーザ光により印刷層を発色させることでインクリボンを用いなくても印字が可能となる。特殊なフィルムは必要ではなく、透明でなければ従来のパッケージそのままでサーマルプリンタから置換えられる。

包装フィルム用プリンタ「FP-1000シリーズ」

一日4本のインクリボンを交換する工場を想定すると月25日稼働で年間1200本が廃棄され、廃棄時のCO2排出量は12㌧にものぼる(一本500㌘として)。この環境負荷がゼロになるだけでなく、「印字が消えない」「インクリボン交換によるダウンタイムがなくなる」などのメリットがある。

いくつもの優位性をもつUVレーザーマーカーは6年ほど前から発売されていたが、普及が進むにつれ課題もあった。従来のUVレーザーマーカーは機械サイズが大きいため、包装機に搭載できる場合とそうでない場合があり、メリットはあっても取り付けがネックで導入が進まないケースがあった。FP-1000シリーズは大幅に小型化し、従来のサーマルプリンタと同じヘッドサイズにしたことで、簡単に置き換えが可能になっている。2022年に発売され、JAPAN PACK AWARDS2023大賞やFOOMA AWARDS2023優秀賞、第26回日食優秀食品機械優秀賞を受賞するなど大きな話題となった。

■食品に特化で小型化成功

レーザを集光させジャストフォーカスにするためには一定の距離が必要となる。焦点距離を従来機の189㍉から同機は0~10㍉までコンパクト化した。食品の包装フィルム印字に必要な機能のみに特化し、水・粉・油などの環境でも影響を受けない耐環境仕様をヘッド・コントローラ・タッチパネル全てで実現している。

SDGsへの取り組みが求められる中、インクリボン廃棄がゼロになる環境面でのメリットに注目する企業も多いが、FP-1000シリーズを導入した製造現場では「印字が消えない」「ダウンタイムがなくなる」ことへの喜びの声が多いという。

表面に転写させているわけではなく、ラミネート層の下の印刷層を化学変化で発色させているので水や油、粉が付着していても掠れることはなく、アルコールなどで拭いたり輸送中に擦れても消えることはない。食品企業からすると日付の印字が消えると法令違反にもなり信用問題にもかかわる。そのリスクを大幅に減らせることが大きい。またあるメーカーからは「ダウンタイムが発生していた時間も生産を続けることができ、年間1000万円分以上多くの製品が製造できるようになった」との声も寄せられ、ランニングコスト以上に、従来のインクリボンの交換時間のロスが看過できない機会損失になっていたこともうかがえる。

環境対応に敏感な大手だけでなく、こうしたセールスポイントをてこに中小メーカーへの導入も拡大している。

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サーマルプリンタとUVレーザープリンタの原理の違い

2024325日号掲載)