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けんかっ早いけど人が好き Vol.69

目覚まし時計の謎

私の朝は早い。五時起きである。年寄りは早く目が覚めちゃって......って、失礼な。これは、朝活なのである。

「起きろー!」という声が大きすぎるので書斎用になった時計。

今の仕事を始めたころは本当にブラックな生活で、夜中の三時まで原稿を書いて六時に仕事に出るのは当たり前だった。これができちゃうのだから20代の体力は無尽蔵である。しかし、30歳を超えてから晩御飯のあとは書かないと決めた。体力がもたない。それに、夜は頭がぼんやりして原稿が進まないのである。七時起きの、なんちゃって朝型の始まりだ。そして最近になって知ったのだが、私の尊敬する編集さんや素晴らしい文章を書くライターさんはみんな朝型だった。四時起きなのである。四時!

さすがに四時は無理だが、私はそれまでの七時起きを改め、昨夏から五時起きにしてみた。するとまあ、午前中の長いこと仕事のはかどること! ただ、冬になると手ごわい敵がいた。朝が暗いのだ。五時なんて真っ暗で、目覚ましが鳴っても体が深夜だと誤解しているのか起きられないのである。布団の中でもぞもぞし、六時にようやく起き出すというありさまだ。情けない。

毎朝のルーティンは、ここ何年も変わっていない。トイレに行き、コーヒーをいれ、ミルクを温める。トーストに大好きなジャムをべったりとぬってスライスチーズをのせて食卓に運ぶ。ふと目の前の時計に目をやると、あれ? 起きてから30分以上たっている。いつの間に? 以前とおなじ作業なのになぜこんなに時間がかかるのか。ついに老化か。私の動きはめちゃくちゃゆっくりになってしまったのか?

悶々としながら過ごすこと数週間。ある時ふと、目覚まし時計を見た。すると15分も遅れているではないか! 我が家はめちゃくちゃ小さい家だというのに寝室のほか、キッチン、リビング、書斎、食卓、バストイレ、玄関のそれぞれに時計を置いている。つまり、目覚まし時計は、朝、起きた瞬間しか見ない。それが15分遅れていたのである。これでわかった。どうりで目覚めてから食卓に着くまで、時間がワープするわけだ。

謎は解決した。私の動きはまだ衰えてはいない。目覚まし時計の時刻を合わせ、問題は解決だ。あとは、春眠暁を覚えずのこの時期を、どう乗り越えるかだけである。

2024325日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)