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けんかっ早いけど人が好き Vol.35

体育会系ジャム

ジャムが好きで、仕事であちこち出かけては買い込むクセがあることは以前書いたとおりである。あまりに好きすぎるので自分でも作る。梨を大量買いしたらハズレだったときや、我が家に長期滞在していたリンゴがふかふかになったときもジャムにする。どれもジャムにしてしまえば、魔法にかけられたように美味しく生まれ変わるのだ。

ジャム作りしか出番のない我が家のホーロー鍋。

秋になると、畑仕事を愛する知人の家に行くのが私の年中行事のひとつである。そこにはブルーベリーの木があり、今年は夏が暑かったせいか秋になってもこれでもかというくらい実がついていた。気のすむまでたっぷり摘ませてもらい、帰宅後は早速ジャム作りである。ジャムを作るというとエプロンが似合う家庭的な印象を持つ人もいるだろうが、私のジャムづくりは体育会系だ。

まず材料。ねっとりとしたジャム状にするために、一般的にはレモン果汁や粉末ペクチンを用いるらしいが体育会系にそんなちまちましたものは必要ない。果実に砂糖を入れてとにかく煮詰めるのみである。砂糖の分量は本来であれば果実の何割くらいと目安があるそうだが、体育会系はやはり無視して一キロの袋を逆さにしてどばどばと目分量で入れていく。つまり、毎回甘さが違う。けれど、それで不都合があったことは一度もない。

コンロに火をつけてホーロー鍋で煮詰めていくと泡が出てくる。灰汁である。料理の基本では灰汁はとるらしいが、はっきりいってこれも果汁の一部。体育会系にとっては栄養だ。美味しいものをわざわざ捨てるのはジャム好きにとって犯罪行為に等しく、よってそのまま煮詰めていく。煮詰めてしまえばそのうち灰汁の泡も消えていく。なんの問題もあるまい。

ジャムを詰める瓶は熱湯で煮沸消毒せよだの、その瓶に詰めたあとは蓋をしてさらに蓋を下にして煮沸せよというのが衛生上の決まりらしいが、体育系はそんなしゃらくさいことはしない。瓶につめて蓋をしたら、そのまま冷凍庫へゴーだ。冷凍すると品質がどうやらこうやら言われるが、品質が悪くなる前に食べきるのだ。だれに迷惑もかけまい。

要は簡単で美味しければ、いいのだ。今年も大量に仕上がったジャムが、冷凍庫で出番を待っている。幸せ!

(2022年10月25日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。内閣府戦略的イノベーションプログラム自動運転推進委員会構成員