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けんかっ早いけど人が好き Vol.48

藤はマメ科の植物

花が美しい季節である。上を向いても下を向いても近くも遠くも目を向けたところに花があり、食用以外の植物に興味のない私でもさすがにほっこりする。先日もふと見上げたら藤棚があった。都会の藤棚は建物に囲まれてちょっと窮屈そうだが、満開を迎えた淡い紫色の花は高貴な雰囲気を醸し出している。花を見ると、豆の花に似ている。そうだった、藤はマメ科の植物なのだ。ゆえにこうして棚にからみつくのである。マメ科か。そうかマメ科なのか。

都会に咲く藤。見ているだけなら、きれいなのだけれど。

このコラムにも何回か登場したが、私には畑仕事を愛する知人がいる。そして、彼女の家に遊びにいくとブルーベリーを積ませてもらい大好きなジャム作りにいそしむことも以前、紹介したとおりだ。

ブルーベリーは背丈くらいの木に葉が生い茂り、そこかしこに実をつける。美味しそうな実がついているものだから鳥も狙う。知人は「みんなでわかちあいよ」と女神の微笑みでいるが、ケチな私はそんなことは言っていられない。特に鳥が狙う木の上のほうの実は太陽の光を浴び、ビタミンもミネラルも多いに違いないのだ。そんな極上の実を鳥にやるなんて!

知人にそう愚痴ったら女神は、私が実を積み終わるまでの期間限定で防御ネットを張ってくれることになった。敵をひとつ、クリアである。

そして、もうひとつ敵がいる。それが、マメ科の植物である。知人宅のブルーベリーは、十本くらいの苗が野性味あふれる育ちっぷりでひとつの塊になっているのだが、その隙間にどこから種が落ちてきたのか、マメのつるがそこかしこから生え、ぐんぐんと伸びているのだ。マメ科ゆえ成長は早く、ブルーベリーの木にからみつき、哀れブルーベリーは枝をひっぱられ、成長を妨げられているのである。実が育たないじゃん!

知人宅でブルーベリーを積むとき最初に私がやることは、このマメのつるを根本から駆逐することだ。はいつくばるようにして根本を探し当てて切り、ぐるぐるとからまったつるをざくざくと切って取り、ブルーベリーの枝葉を自由に伸ばさせてあげるのである。

藤の花を見て一瞬、花に見とれたものの、すぐにブルーベリーにからみつく姿を思い出してしまった。今年も闘いの季節が近づいてきている。

2023515日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)