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けんかっ早いけど人が好き Vol.49

洗剤と予洗い

私には、見るたびに腹を立てるテレビコマーシャルがある。食器洗い洗剤のCMだ。スポンジに洗剤をつけ、油でべっとべとの皿やフライパンをすーっとなぞると、あらまあ、ほら、こんなにきれいに! というやつである。

手のひらサイズのヘラは、小回りがきいて驚くほど使いやすい。

ちょっと待て。予洗いはどうした、予洗いは。

予洗いとは、洗剤をつける前に水で汚れを落としておく行為である。お湯でやれば油分もかなり落ちる。予洗いしてから洗剤で洗えばもっと楽に洗えるのに、なぜ、ソースやカレーなどがべっとりとついたままの皿やフライパンを、いきなり洗剤で洗おうとするのか。ほかよりも優れた洗剤の性能をアピールしたい気持ちはわかるが、宣伝の方向性が違うのではないか?

我が家のやり方を紹介しよう。用意するのは全長5センチほどの小さなシリコンゴム製のヘラ、そしてくったくたになるまで着てあとは捨てるだけのTシャツなどを手ごろなサイズに切った古布である。カレー鍋もミートソースのフライパンも、まずヘラでこそぎ落とす。オタマではとりきれないルーなども、ヘラを使えば舐めたようにきれいにとれるのだ。もちろんこれは食べる。捨てればゴミ、食べれば栄養である。続いて古布を用いて予洗いである。一見きれいに見える鍋も、お湯で洗うと古布にべったりカレーの黄色やミートソースの赤がついてくる。これをスポンジでやろうとするとスポンジに色がついてしまい面倒なのである。このあとやっと、洗剤をつけたスポンジを用いて洗うのだが、この状態にまでしておくと洗剤は驚くほど少なくてすむのだ。

古着分のゴミは確かに増えるものの、もともと捨てるものなのでゴミの量は変わらない。というか、ゴミ問題は削減が叫ばれるものの、じゃあ、汚水問題はどうでもいいのか。下水処理施設への負荷を下げる意味でも流す水は少しでもきれいにしたほうがいいのではと水族館でイルカやウミガメを見るたびに思うのだ。

だまされたと思って小さなヘラと古着のセットを試してみてほしい。本当にストレスなく洗えるのだ。CMで性能をアピールするとともに、こっそり洗剤消費量を増やそうとしているメーカーの思惑にはまっている場合ではないぞ、同士諸君!

(2023年5月25日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)