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けんかっ早いけど人が好き Vol.52

プロの知恵

久しぶりに結婚披露宴に参列した。コロナの長い自粛からやっと解禁になり、これまでのうっぷんをはらすかのような、立派で荘厳で素敵なお式だった。

サランラップでまき、これで次回は大丈夫って、次回はいつ?

これまでずいぶんと結婚式に出たが、なぜか私が参列した式は離婚率が高い。イチローさんの打率よりも高く、お祝い金を返せといいたいくらいだ。疫病神みたいでいやなので、その後は結婚式の参列をさりげなく避けてきた。今回もジャブ打ちの連絡があった際に伝えてみたのだが。

縁起悪いよ。別れない自信があるなら別だけど。

すると、新郎となる若き友人は運試しなのか怖い物見たさなのか、正式な招待状を送ってきてくれたのだ。知らないよ、どうなっても。

となると、なにを着ていくかである。祖母がお茶の先生をしていたこともあり、我が実家には腐るほど着物がある。さらに母が「あんたは背が高いから、おばあちゃんの着物は丈が合わない」と、私用に新たに買いそろえるという暴挙に出て、タンスは肥えまくっているのである。

仕方ない。ここは親孝行だ。着物で参列するか。実家にもどり、六月に似合うアジサイ色の訪問着を選ぶ。帯締めもシックに濃い紫だ。しかし、帯締めには両端に房があるのだが、これがタコ踊りのようなへんなクセがついているではないか。私以上にいい加減な母が、適当にしまい込んだ産物である。実家から持ち帰り、霧吹きで水をかけてなんとか伸ばしたものの、これはこのあと、どうやってしまっておけばいいんだろう?

当日、着物を着せてもらっていると、着付けの先生が私の帯締めに目をとめた。着物の「き」は「気」だ。こんなずさんなしまい方は、先生の美学に反するのである。すかさず私は腹を見せて降参し、どうやってしまっておけばいいのか問うてみた。すると先生、その道のプロ。現代ならではの正答がマッハの速さで返ってきた。

「サランラップで巻くのよ。」

なんと!

どんな世界にもプロがいる。そしてプロの知恵を知ることで、世の中はちょっと便利で気持ちよく過ごせる。

新たな知恵をつけてもらい、私は柄にもなく、また着物を着てみてもいいかなと思い始めている。

2023710日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)