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けんかっ早いけど人が好き Vol.66

バレンタインデー

今年もこの日が近づいてきた。バレンタインデーである。無人島にひとつ、なにを持っていくかと問われたらチョコレートと答えるほどラブな私は、長い間ずっとこの大騒ぎを歯ぎしりしながら見てきた。なぜ、チョコレートを買うのが女性で、もらうのが男性なのだ。海外(特にキリスト教徒の国)ではこの日は愛を確かめ合う日。男性が女性にプレゼントをするのに。日本ではチョコレート業界の陰謀でチョコレートを送る日にしたのはいいけれど、なぜ、男性が女性に送ることにしなかったのかと本当に悔やまれる。過去にもどって進言したい。まあ、私が愛をささやかれながらチョコレートをもらえる自信はほとんどないのだが。

ちょこまみれなドーナツ。美味!

チョコレート業界成功の流れにのろうと返礼品を渡すという姑息な理由でホワイトデーが登場し、最初はマシュマロ業界がその座を勝ち取った。しかし、あの腹にたまりもしないふわふわで中途半端な甘さのお菓子はいつの間にか姿を消し、キャンディにとって代わられた。さらに近年は、やっぱりチョコよねと変化しつつある。そりゃそうだ。チョコレートの美味しさにかなうものなどないのだから。

ジェンダー論の盛り上がりもあり、女性から男性にチョコレートをがんがん買って送りまくるという狂騒曲は収まってきた。義理チョコというわけのわからない風習も昭和の化石となった。台頭してきたのはご褒美チョコという素晴らしい文化だ。自分が自分のためにプレゼントするチョコレート。それをあてこみ、高級チョコレート店も、女性受けする味とデザインで腕を競い合っている。デパ地下に足を踏み入れると、うっとりする光景が広がりここに住みたいくらいだ。ご褒美チョコ文化が浸透してありがたいのは、これまで欲しくて食べたくてしょうがないチョコレートがあっても、自分でいくつも買っていると「この人、いったい何人にわたすつもり?」と怪訝な視線を向けられていたものがなくなったことだ。

今や、ドーナツもアイスクリームも、せんべい店までもがチョコレート・バージョンを店頭に並べ浮かれている。こんなお祭り騒ぎなら大歓迎だ。ご褒美チョコ、ばんざい。そして今、私はこれでもかというほどチョコレートを買い込んでいる。いい時代である。

2024210日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)