日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として半世紀を超す実績。
日本物流新聞社のWEBサイトでは、
ものづくりを支える工作機械、工具、ロボット、産業機器等の情報から、
ハウジングはじめ住まい・暮らしの様々なニュースをお届けしています。

検索

Voice

三共製作所 開発本部 開発設計3課 佐川 拓己 氏

50年のノウハウ詰まったローラギヤカムが最新ニーズ開拓

1973年に日本で初めてローラギヤカム機構によるインデックスドライブを開発してから、カム技術を軸に様々な製造現場のモーションコントロールを支えてきた三共製作所。主戦場である工作機械分野では5軸加工機の需要増などの追い風もある中、カムの新領域での活用に向け、より手に取りやすい製品づくりに余念がない。

RollerDriveの開発に携わる佐川拓己さん。同社の強みについて「設計と製造の現場側のコミュニケーションが活発。風通しのよさが強みと感じている。ユーザーニーズをくみ取るという点でも重要となっている」とみる

――最近の景況感は。

「当社製品は工作機械向けが多いので、日工会の数字と同様、昨年末から落ち着いています。一方で、EVのモーターコア向けのプレス用フィーダーの引き合いが増えてきていることから、年末から来年にかけてEVを中心とした自動車関連の部品加工向けの仕事も戻ってくるのではないかとみています。半導体製造装置も調子は悪いですが、年末に向けて動き出すとの見方もあるため、期待できる材料はあると捉えています」

――RollerDriveのコア技術である「ローラギヤカム機構」は1973年に貴社が国内で初めて開発されました。その特長を教えてください。

「ローラギヤカム機構は、入力軸(ローラギヤカム)とローラフォロアが組み込まれた出力軸(タレット)によって構成されたもの。高速・高精度な位置決めができることや高い剛性、長寿命であることなどが特長です。歯車式やウォームギアは歯の噛み合い時に隙間ができてしまうため、バックラッシと呼ばれるガタツキが発生するのに対し、RollerDriveはローラフォロアが転がり軸受構造で、適度な予圧状態を保ちながら転がり接触でトルクを伝達するため、カムとローラフォロアの間をすき間なく構成することができ、ガタツキなくスムーズな動力伝達が可能です」

――他社の製品と比較して、貴社の強みは。

「当社は1970年からローラギヤカム機構の研究を始めており、そこから約50年、動作伝達の要であるカム形状の最適化や製造方法の追求、材料の模索などを行ってきています。新製品を市場に問うと新たなユーザー要求が常に出てくるので、そうした市場ニーズに対し、ノウハウ・技術力に基づいた柔軟な対応力が強みとなっています」

――国内外に5つの生産拠点がありますが、静岡工場をマザー工場としています。静岡工場の役割や強みを教えてください。

「静岡工場をマザー工場としているのはメインの開発拠点と生産拠点を持つことに加え、カムやローラフォロアといった主要部品を生産していることが理由です。開発から設計、生産、組み立て、検査などの最終工程まで一貫して行っているため、常に技術者の目が行き届いた環境で生産できることを強みとしています。部門間のフィードバックが迅速にでき、お客様からの依頼について技術者にすぐに伝えることができますし、三共製作所らしさでもある精度追求のため、JISなどの一般的な規格よりも非常に厳しい基準を設けた規格を独自に設定し、それに則り開発・生産を行っています」

――RollerDriveの今後の方向性を教えてください。

「ハードだけでなくソフト面の開発にも力を入れています。その第一弾がモータ制御用のコントローラ。従来、当社はRollerDriveの設計・納入までを行い、納入後のモータ制御はお客様に任せていました。しかし、お客様の間でカムは難しいものという印象が広がってきていることを受け、制御まで当社が担いカムを使用するハードルを少しでも下げ、お客様にとってより手に取りやすいものにしたいと考えています」

――EVなど新たな分野での活躍も目立ちます。

10年先20年先のことを見据え、新たな業界の開拓、その業界にあった製品の開発を進めていかなければならないと考えています。その上で、今まではお客様から来たニーズに対して応えるといった形が多かったのですが、今後はこれまで培ってきた知見やノウハウを使って、当社からお客様のニーズにの提案をしていくことが必要になるとみています」

230725三共製作所_写真2.jpg

20年の歴史を持つRollerDriveは、蓄積した確かなノウハウと技術をもとに、ユーザーの要望に対し、柔軟かつ適切に対応できるのが強み

株式会社三共製作所

1938年創業、1951年設立、社員765

東京都北区田端新町3-37-3

RollerDrive(精密減速機)、Sandex(インデックス)、Variax(プレス材料送り装置)、その他工作機械関連装置を製造・販売

1938年、航空機翼、キャタピラー部品の製造を目的に前身の小川製作所を創業。戦後社名を三共製作所に変更し、自動車部品、家庭用電気部品の製造を始める。1970年にローラギヤカム機構の開発に着手し、73年に国内初となるローラギヤカム式インデキシングドライブの開発に成功した。2005年にゼロバックラッシのローラードライブRAシリーズを開発し、精密な動作制御を必要とする工作機械を中心に様々な製品に採用されている。