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グリーソンアジア 営業・マーケティング本部長 蟹江 俊靖 氏

高まる測定需要にハード・ソフトの複合提案

歯車加工機のリーディングメーカーとして知られる米・グリーソン。その日本法人であるグリーソンアジアには今、歯車測定ソリューションの引き合いが数多く舞い込んでいる。自動車の電動化で音の出ない歯車が求められているのは周知のとおりだが、それ以外の産業でも高品質な歯車のニーズが増加。同社は歯車測定機や解析ソフト、パワースカイビング盤からホーニング盤まで広範な製品群を駆使し、この需要に応える。

――直近の需要動向は。

「押し並べて忙しいですが、特に歯車測定のニーズが昨年のJIMTOFを機に激増しています。体感的にそれまでの3~4倍でしょうか。自動車業界からは電動化に伴うギヤノイズの低減を目的とした引き合いが、一般産業からは極小径歯車や非インボリュート歯形の特殊歯車を測りたいという話が寄せられています。出自不明の歯車をリバースエンジニアリングで作りたいという需要もあります。いずれにしても、他社で断られた案件が続々と我々の元に集まっています」

――難しい依頼が来る背景を教えてください。

「例えばモジュール(基準円の直径を歯数で割ったもので、歯の大きさを表す)0.5㍉の極小径歯車の場合、プローブも非常に折れやすく技術的・機械的な制限から大半の測定機では測定できません。またアルゴリズムがなければ専用のプログラムを組む必要もあり、対応を忌避されがちです。しかし我々は大径/小径、接触/非接触、量産/開発向けなどあらゆるシーンに向けた測定機を揃え、動作精度も高い。ギヤボックス内の歯車の負荷やたわみまで解析できる『KISSsoft』など、歯車解析・設計・測定ソフトも用意しています。ソフトはWindows上で動くため汎用的なソフト開発が可能で我々も柔軟に対応できる。結果として相談が来る流れでしょう」

――ハードとソフトの複合提案が効いていると。

「ただ測るならハードルは高くないかもしれません。しかしユーザーは何らかの課題解決のために測定がしたいわけです。その点、歯車専門の我々なら起きている事象そのものと原因を捉えられます。もちろん改善策も提案できます。例えばギヤノイズが課題だとして、我々の測定機とソフトを使えば原因不明のゴーストノイズまで解析可能です」

――ゴーストノイズについて詳しく教えてください。

「歯車はピッチ・歯形・歯すじの精度が良ければひとまず成立しますが、条件を満たしてもノイズが生じる場合があります。また例えば歯数が10の歯車なら10の倍数の噛み合い時にノイズが発生するはずですが、妙なタイミングで異音が生じることがある。この謎の異音がゴーストノイズで、要因のひとつは歯面のうねりです。これは面粗度とも違う概念。我々のレーザー式測定機はうねりを面で捉え、さらにグラフで可視化します。線で捉えるプローブ式なら一晩たっても終わらないものを一瞬で解析するわけです。どの歯がノイズの原因か(公差外か)を突き止める機能もあります。レーザー式測定機は量産より開発向けですが、開発段階で定量的な閾値がわかれば量産にフィードバックが可能。結果としてゴーストノイズを抑制できます」

――車の電動化が進んでいます。提案する加工機は。

EVでは減速機ユニットの小型化のために2段歯車が増えますが、ノイズを減らすためシビアな位相公差が求められます。しかし干渉で一体加工が難しいのが課題でした。対して我々のホーニング盤『260HMS』は、2段歯車を2つの砥石でワンチャック加工します。別加工した歯車を組み合わせるより精度が高く、自動車業界でもトライアルが進む注目技術です」

――EVでは静音化のために遊星減速機が増え、内歯車も増えると聞きます。

「内歯車の課題は熱処理後の仕上げでした。ネジ状砥石を使った歯研では干渉でアクセスできません。とはいえ精度を上げる必要があり、各社が悩んでいます。これに対し我々は、スカイビング盤で焼入れ後の仕上げを行うハードパワースカイビングを提案しています」

――再び測定の話に戻ります。歯車測定の需要は今後も伸びが期待できますか。

「伸びる伸びないの次元ではなく、伸び代しかないと思います。我々もこの5年でかなり測定機を納入しましたが、まだまだ需要はあるでしょう。国内では長年の勘コツや独自の方法で歯車を製作する現場も多く、『正しい』測定のノウハウを持たないこともザラです。しかし要求されるレベルが上がり、不良の要因を数値で捉えないと対応できない局面に達しつつある。歯車は単に形状を測れば良い世界ではありません。歯車専門の我々の出番だと考えています」

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歯車研削盤とレーザー式の非接触測定機をロボットで結んでセル化し、歯車の全数検査を可能にする提案も

グリーソンアジア株式会社

東京都中央区月島1-2-13

ホブ盤、歯車研削盤、ホーニング盤、パワースカイビング盤など各種歯車加工機のほか、工具、測定機、歯車解析・設計・計測ソフトなど歯車のトータルソリューションを販売

ベベルギヤ設計・製造・測定のトップメーカーであり、歯車のトータルソリューションを手掛ける米国・グリーソン社の日本法人。ホブ盤、ホーニング盤、パワースカイビング盤など高性能かつ幅広い歯車加工機を日本や台湾、東南アジア市場へ提供する。近年では測定ソリューションの提案にも注力。測定機と歯車設計・解析ソフトなどを組み合わせた複合提案を行う。ギヤノイズの抑制や歯車品質の向上を目的とした導入が増えているという。

(2023年7月25日号掲載)