日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として半世紀を超す実績。
日本物流新聞社のWEBサイトでは、
ものづくりを支える工作機械、工具、ロボット、産業機器等の情報から、
ハウジングはじめ住まい・暮らしの様々なニュースをお届けしています。

検索

Voice

カシフジ 営業部 部長 尾崎 博史 氏

歯車加工の「高精度化」を内覧会で共有

2023年2月に創業110年を迎えたホブ盤のトップメーカー・カシフジ。自動車業界と共に成長してきた同社だが、電動化・自動化ニーズが急速に拡大する中、AGVや自動搬送装置に使われる精密減速機や多関節ロボットに使われる減速機の需要の伸長が見込まれている。また電動化で歯車は「高強度化」や「静粛性」が求められ、そのニーズに応えられる機械の開発に力を注ぐ。7月20〜21日の内覧会で、最新提案を披露する。

営業部の尾崎博史部長

――創業110年を迎えられました。

2023211日に創業110年を迎えることができました。1913年に創業し、18年に日本で最初のホブ盤を製作。それ以来ホブ盤を生業にし、戦後の経済成長期には、自動車業界を中心に多くのニーズに応えようとホブ盤の開発・製造を行ってきました。それが『ホブ盤のカシフジ』というブランドを築くことにつながったと考えています。さまざまな人々が携わって歩んでこられた歴史があり、すべてのみなさんに心から感謝します」

――今回、内覧会でも展示される「歯面仕上盤」の狙いは。

「近年の電動(EV)化に向かう流れのなか、かみ合い効率の向上による燃費向上に加え、高強度化や静粛性向上の要求も一段と強まり、歯面粗さには歯車研削や内歯砥石式ギヤホーニングで得られる粗さ以上のものが求められるようになってきました。多くの自動車用歯車は歯車研削などで歯面を仕上げていますが、ほかの業種では、歯車研削まで必要でない歯車も多数存在します。そのような歯車も『音や振動の発生が少ない歯車へ仕上げたい』という要求がないのではなく、かけられるコストに見合う仕上げ工法がないのが実情と考えています。歯面仕上げ加工では1970年にネジ状外歯砥石で歯車を磨くギヤホーニング盤を製作し、当時は『(騒音のもとになる)打痕を除去する』ことを目的としていました」

「このたび開発した歯車仕上盤『KGH250』は、歯車研削盤のように歯形や歯すじをコントロールすることはできません。しかしホブ切りで生じる多角形誤差や送りマークの除去、歯面粗さの向上が可能であり、『ローコストでの歯車精度向上』に貢献できると考えています。歯車研削後にRz2.0㍃メートルだった歯面が、打痕取り用の当社製砥石よりもやわらかい砥石を使って歯面を仕上げた場合、Rz0.6㍃メートルに向上し、歯面粗さの向上で高次のギヤノイズが低減できた例もあります。砥石と研削条件しだいで効果が表れ、まだまだ未知数な部分の多い工法です。KGH250は、従来機の目的だった『安価な歯面仕上げ、打痕除去』を現在も潜在的なニーズとしてとらえ、より広い分野で活躍できると期待しています」

――高精度化には前処理も重要です。内覧会では歯車面取盤を展示されるとか。

「意外に見落としがちなのが、歯車の面取り加工です。面取り加工は本当に『厄介』な作業で、1977年に開発したKD1型歯車面取盤は、現在も販売しているロングセラー機。キツツキのような動きで歯車端面のバリ取りを行うものです。欧米では『切削面取り』が主流になっています。その方式は様々ですが、ホブに似た円筒状、もしくはV溝を加工する円盤状のカッターを使用して加工する方式が主流です。この方式の難点は、ワーク形状や治具形状がカッターとの干渉を起こしやすい点。その点を考慮する場合、キツツキ方式は『優位』といえます。主な特徴は両端面のバリ取り加工をワンチャックで実現できる点と、全軸をNC化し、段取り時間の短縮を実現できる点です」

――内覧会ではギヤスカイビング盤も展示されます。

「小型減速機の内歯車では自動車ほど生産量が見込めません。一般的には自動車用歯車よりも歯切り時の加工要求精度が高く、ギヤシェーパより高精度・高能率に加工できるギヤスカイビング加工の採用が拡大しています。当社の最新のギヤスカイビング盤は熱変位が少なく、高い寸法安定性を備えており、連続加工でも安定した加工精度を得られます。バックラッシュの大きさが製品のランクに直結する小型減速機では、歯厚寸法が安定していることは重要です。熱処理ひずみを考慮した歯切り加工が可能ですし、超硬スカイビングカッタを使用して熱処理後の歯車を仕上げるハードギヤスカイビング加工も可能で、内歯車の高精度化を実現できます」

――当面の歯車加工の需要をどう見ますか。

「電動化・自動化ニーズが急拡大しています。またSNSを筆頭に情報速度が早くなり、良い製品の情報をすぐ入手できます。この環境下で『安かろう・悪かろう』の製品は採用されないでしょう。今は『足踏み』かもしれませんが、近々に日本製の精密減速機や多関節ロボットに使われる減速機の需要が、間違いなく拡大すると考えます。我々は、そこに使われる歯車の高精度化と安価に作れる方法を提案します。焼入れ後の歯車を超硬ホブで仕上げる『ハードホビング』や歯面仕上盤はその一例。みなさんと共生しながら進んでまいります」
KD250C_main.jpg

独自の「キツツキモーション」を進化させた歯車面取盤「KD250C

株式会社カシフジ

1913年創業、従業員数220

京都市南区上鳥羽鴨田町6番地

ホブ盤やギヤスカイビング盤、ホブ刃溝研削盤、歯車面取盤など各種歯車加工機を製造・販売

2023年で創業110年を迎えた歯車加工機の老舗。ホブ盤のトップメーカーとして知られるが、その地位の理由を尾崎部長は「地道に業界のみなさんに貢献してきたこと」と話す。「みなさんの声を聴き、開発を進める。その繰り返しでここまできましたが、我々の力でなくユーザーの叱咤激励の結果です。自動車メーカーでは24時間機械が動きます。当社の機械は、その環境下で20年・30年、精度良く稼働するのが当たり前です。機械部品のほとんどを内製し、購入品にも厳しい品質検査を行う姿勢が長寿命と信頼につながっていると思います。それがカシフジの考える『ものづくり』で、これを続けてまいります」