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ヤマザキマザック 取締役 常務執行役員 営業CS本部 本部長 山崎 真嗣 氏

MECT2023出展社インタビュー
自動化・デジタル・環境技術を連携

――国内の景況感は。

 「いわゆる調整局面で、一進一退の状況にあります。EV部品は現状、中国やタイなど日本を除くアジア地域が需要の中心地です。ただ、このところ落ち着いている半導体産業は今後の需要増加が見込まれます。お客様も今はその波を待ち構えています」

――そんな中、MECT2023の開催が迫ります。テーマと出展内容は。

「テーマは『カーボンニュートラル(CN)に向けた、マザックのデジタル製造ソリューション』。出展機は複合加工機『INTEGREX i-200H S』など7台で、4台を自動化システムと連携させます。クーラントを無駄なく制御する機能などを搭載し、省エネ性能を高めた『NEOシリーズ』も出展します。つまり柱は環境技術とデジタル技術、そして自動化技術です。この3つの技術は表裏一体。例えば自動化設備を導入したとして、それらがソフトウェアで機械とスムーズに連携してこそ生産性は上がります。またCNでは機械の非加工時間をいかに減らすかが重要。つまり段取り時間を減らすデジタル技術と自動化技術が鍵を握ります。MECTではこれらの高度な連携をお見せします」

――まずは自動化からお聞きします。具体的な展示内容は。

「INTEGREX i-200H Sと可搬重量30㌔の新たな協働ロボットセル『Ez LOADER30』を繋ぎます。これまでも可搬重量10・20㌔の機種は提案してきましたが、ハンドの重さを考慮すると掴める素材の重量に限りがありました。Ez LOADER30ならアルミに加え鉄など幅広い素材に対応可能。展示機はハンドとジョーを自動交換し、1台のロボットで素材や形状の違うワークが混在する現場を自動化するコンセプトです。加えて、専用ソフトウェア「Ez LOADER APP」を新たに開発しました。ワークナンバーを選択するだけで、ロボットを運用するために必要なデータをCNC装置から取得し、簡単に動作プログラミングを作成できます。この自動化技術は先日閉幕したEMO Hannover(EMO)でも好評を博しました」

――デジタル技術ではサブスク型サービス「マザトロールDX」をリリースされました。

「従来から提供していた加工プログラムの自動作成機能やオフィスPC上での加工シミュレーション機能に、3Dモデルから見積もりを作成する『クイック見積もり』や段取り指示を作成する『セットアップガイド』を加えたのがマザトロールDX。対象機種は旋盤を皮切りに複合加工機などへ順次拡大中です。今回展は立形マシニングセンタ(MC)に見積もり機能を実装します」

――マザトロールDXの浸透具合はいかがですか。

「我々の会員サービスで120日間の試用版と動作を解説するeラーニングを無償提供し、普及を図っています。まだ認知が充分ではないものの、現場の自動化が進めばマザトロールDXもセットで普及が進むでしょう。例えばクイック見積もりは熟練技術者が現場を去っても従来通りの見積もり作成を可能にする機能。人手不足の解決という点で自動化と目的が近いからです。また様々なワークが混在する受託加工の現場では段取り時間の削減が重要で、セットアップガイドはこれに直結します。CNの観点でも段取り時間の削減は大いに意味がある。この利点を今回展でいま一度訴求します」

■FSWにアジア勢が熱視線 

――中部開催の展示会です。EVに向けた提案は。

「FSW(摩擦攪拌接合)加工機『FSW-460V』を提案します。FSWはバッテリーケースやインバータケースを高品質に接合できることから、EVの量産が始まっている中国や台湾、東南アジアで需要が高まっています。ただ今のところそれら需要の中心地にFSW加工機の選択肢が満足に提供されておらず、メーカーのサービス体制にも課題がある。そこで速度と品質、サービス体制に優れた我々のFSW加工機が注目され、実績を伸ばしています。EMOにも同機を出展しましたが、やはりアジアからの来場者の注目度が際立って高かった。彼らの目の前にはFSWが必要なワークが溢れているのに、選択肢が少なくかなり困っておられます」

――国内もFSW加工機の需要は高まりつつありますか。

「相当数のテストカット依頼があり、期待値が高いのは間違いありません。ただ国内のEVの本格的な量産はまだこれから。今は様子見が多いのも事実です。しかしEV化の波は遅かれ早かれ訪れるでしょうし、日本を除くアジア地域ではEV向けの投資がすでに本格化し、そこで経験を積んだ海外サプライヤーが日本市場を虎視眈々とうかがっています。いざ実際にEVワークの依頼が来ても、備えがなければ対応は難しい。今こそ先を見据えた投資が必要です。国内企業にもぜひ目を向けて頂きたいですね」

――EVにCNに自動化にデジタルと、提案が多岐にわたります。

「実は他にも見どころがあり、それは軟鋼材の厚板を切断できる高出力の二次元ファイバレーザ加工機。MECTは15kW発振器搭載の『OPTIPLEX 3015 NEO』を出展しますが、EMOでは20kW機を発表しました。安価な機械ではないですが、受託加工業の方々に導入いただくケースが増えています。鋼材価格が高騰中で、鋼材の切断を内製化するためです。切断した鋼材の加工には立形MCがよく使われますが、我々のマザトロールはワークの3Dモデルを元に、デジタル連携により2台の機械の加工プログラムを一気通貫に作成できます。こうした新たな発見を我々のブースで提供できれば幸いです」

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複合加工機「INTEGREX i-200H S」と可搬重量を上げた協働ロボットセルを組み合わせ、様々なワークが混在する現場を自動化する

(2023年10月10日号掲載)