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オークマ 執行役員 営業本部 本部長 小田 義則 氏

MECT2023出展社インタビュー
精度と省エネのグリーンスマートマシン

――MECTの季節になりました。前回展から約2年、ユーザーニーズに肌で感じる変化はありますか。  

「脱炭素に対するお客様の本気度が違ってきましたね。2年前は皆さん、何から手を付けるべきかまだ手探りでした。今は大手企業からサプライヤーへ具体的な指針や目標が出されていますし、設備投資の判断基準のひとつに数値化できる省エネ性能が加わりました。つまり脱炭素に貢献できる機械でないと土俵に上がれなくなりつつあります。またコロナ禍を経て人手不足はさらに深刻化しました」

――そうした環境下で、貴社はどのようなテーマで展示をされますか。

「全体を貫くのは自動化・デジタル化・脱炭素の3つのテーマ。これに対応する4台の機械を披露します。現場では今、とりわけスキルを持つ人材が不足し、初心者の方が簡単に操作できる機械が求められています。そこで4台すべてに新型CNC装置『OSP-P500』を搭載し、実際に操作頂けるコーナーも設けます。図面さえ読めれば使えるくらいに操作性が高く、NCプログラム知識も一切不要。従来は図面を元に、加工の設定や工程をGMコードで入力していたものが、ガイドに従い入力するだけで初心者でも安心操作が可能となりました。またオフィスのPCと実機搭載のOSP︱P500でも機械稼働データを用いたシミュレーションが可能で、これによりオフィスで事前に加工準備が可能となり、すぐに実加工が開始できるため機械の稼働率を大幅に向上できました。また、出展機はいずれも我々が『グリーンスマートマシン』と呼ぶ、精度と環境性能を兼ね備えた機械です」

――グリーンスマートマシンは、貴社の技術である「サーモフレンドリーコンセプト」と、「エコスイートプラス」を搭載した機械ということでしょうか。

「仰る通り、核はその2つの技術です。サーモフレンドリーコンセプトは元々、経時温度変化による寸法精度のばらつきを抑えるべく開発されました。MECTにも出展する立形マシニングセンタ『MB-46VⅡ』は一般の工場環境下で経時加工寸法変化5㍈を実現。一般的に10㍈以下の高精度加工を安定して行うには恒温室が必要となりますが、独自の機械構造設計と熱変位制御技術により、驚異的な加工精度を実現。わずらわしい寸法補正や暖機運転から解放され、長時間の連続運転と工場温度環境の変化にも抜群の寸法安定性を発揮することを約束します。電力を無駄に使う暖機運転も不要です。またエコスイートプラスは、精度に影響しない範囲で主軸の冷却装置やミストコレクタなどの周辺装置を積極的にオフするような、省エネ機能の総称。つまりどちらの技術も精度と省エネを高次元で両立します。やはりオークマとして精度は譲れません」

――自動化提案はいかがですか。

「ビルトインロボットを搭載した、CNC旋盤『LB3000EXⅢARMROID』を出展します。中小企業の方々は多くがロボットの導入経験がなく、本当にロボットで生産が成り立つのかとナイーブになっておられる。ARMROIDなら慣れ親しんだ機械と同じ感覚でパルスハンドルによりロボットアームを動かせますし、始点と終点を教えれば中間動作を自動生成してくれます。立上げ時やチョコ停でSIerを呼ぶ必要もありません」

――機内ロボットは特徴的な技術です。

「機内にあるからこそ、ロボットがさまざまな作業を行います。加工中はワークのビビり抑制やミキシングブローによる切粉の絡みつき抑制などをサポートする加工支援もできます。また長時間連続運転というより、自動化と手動操作の柔軟な切替を意識しています。機械前方に接続したワークストッカーを、人力で簡単に移動できるんです。例えば定時後に自動加工を行う一方で、飛び込みの仕事は手動操作に切り替えるなど現場の実情に即した運用ができる。ロボットに二の足を踏んでおられたお客様も、導入すると現場の雰囲気が変わります。『ロボット、使えるじゃないか』という空気感が生まれるんですね。2台目、3台目のリピートもよく頂きます」

■強まる工程集約ニーズ

――その他の見どころは。

「複合加工機『MULTUS B300Ⅱ』を出展します。会場では外径旋削はもちろん、ギヤ加工も実演する予定です。足元では人手不足もあり、こうした工程集約機が国内外でよく売れています。また従来は専用機で量産を行っていた自動車メーカーが、工程集約機で量産を行う流れもあります。消費者の嗜好が変わる速度が早まっていることも背景にあるのでしょう。複合加工機は競合も多いですが、我々の強みはやはりサーモフレンドリーコンセプト。コールドスタートが可能で、休憩時間を挟む精密加工でもオペレータの方がノンストレスで作業できます」

――いち来場者として興味のあるテーマはありますか。

「我々が掲げた自動化・デジタル化・脱炭素はいずれも社会課題。様々なメーカーがそこに焦点を当てた展示をされると思いますが、アプローチ方法には違いが出るでしょう。脱炭素に関して言えば、我々が2000年代初頭から精度を追求するために開発してきたサーモフレンドリーコンセプトが、今は脱炭素に直結する技術として注目を集めています。精度と省エネをいかに両立するか。そこに興味がありますね」

――翻って、国内景気は調整局面です。

「確かに様々な業界で様子見がありますが、悲壮感はまったくありません。自動車メーカーでは24・25年に向けた投資計画が動いていますし、自動運転技術などでさらなる半導体需要も生まれるでしょう。皆さん押し並べて投資意欲は高く、あとは踏み切りのタイミングを見計らっている状態。ひとたび動き出せば、投資は一気に加速するはずです」
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CNC旋盤「LB3000EXⅢ」にビルトインロボット「ARMROID」を搭載して披露する。機内型ロボットならではの動きや操作性に注目したい

(2023年10月10日号掲載)