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eve autonomy 代表取締役CEO 星野 亮介 氏/ヤマハ発動機 ロボティクス事業部 営業統括部 FA営業部長 畔田. 慎治

ヤマハ発動機 × eve autonomy「μ to(と) km」から「μ to km」へ

μ台の精度が求められる搬送から工場建屋間の屋外搬送までをロボティクスでつなぐヤマハ発動機グループ。出展内容やテーマについてヤマハ発動機・ロボティクス事業部 営業統括部 FA営業部長の畔田(くろだ)慎治氏とeve autonomy・代表取締役CEOの星野亮介氏に聞いた。(以下、敬称略) 

ヤマハ 発動機 ロボティクス事業部 営業統括部 FA営業部長 畔田 慎治 氏(左)
eve autonomy 代表取締役CEO 星野 亮介 氏

——いよいよ2023国際ロボット展が始まります。今年の出展テーマについて教えて下さい。

畔田 今年も前回展と同様に「μ to km」をテーマに出展する。しかし、前回展では「μ」に対応する製品と「km」に対応する製品それぞれが、独立した提案となっていた。今年は初公開する次世代搬送トータルソリューションデモなど、製品・企業同士のコラボレーションの度合いを強めた展示となっている。

星野 次世代搬送トータルソリューションデモはヤマハ発動機がやっているμ台の精度が求められる生産ライン向け製品から、eve autonomyが取り組んでいる工場の建屋間搬送までを、参考出展する協働ロボットを搭載したAGVで結びながら、一気通貫で提案する。昨年までは「μ to(と) km」であったものが、今年は文字通り「μ to km」になりつつある。

コラボレーションを強める狙いは。

畔田 我々が搬送分野でお客様に価値提供する際の根幹に「理論値生産」という考え方がある。モノづくりにおける総操業時間を細かく可視化・分割していき、それぞれの時間を価値と無価値に分類し、生産に本質的には寄与していない無価値時間を極力減らしていくことで、理論値に近づけていく考え方。この際、重要なのが全体を見ること。各工程をいくら早めても、工程間をつなぐプロセスが遅ければ意味がない。工程間の搬送から建屋間の搬送までを連携した形で見てもらうことで、来場者のイメージを喚起し、気付きを提供できたらと考えている。

星野 屋内の生産工程間の効率化は非常に進んでいる一方で、少し離れた場所への搬送や建屋間の搬送などは置き去りになっているケースが多い。eve autoやスカラロボットの様な既に実績のある製品と、参考出展製品を織り交ぜながら、工場全体の搬送工程をイメージいただけるデモを提案することで、我々も気付いていない工程と工程の間の無駄や現実ではこうはいかないよねといった生の声をいっぱい集められればと思う。

■EV向けでリニアコンベア好調

ヤマハ発動機としては新製品も数多く出展します。イチ押しの製品を教えてください。

畔田 今年の国内売上をけん引しているリニアコンベアモジュール「LCMR200」と展示会直前に上市するクリーンルーム向けのスカラロボット「YKXEC」がイチ押し。LCMR200は搬送スピードと耐荷重性が求められるEV用バッテリーセルの組付け工程向けが非常に好調。本製品は最高速度が毎秒2500㍉、最大可搬質量は昨年から従来比2倍の30㌔まで対応できるようになっており、無価値時間を限りなくゼロに近づけることができる。

——搬送スピードの速さが特長なのですね。

畔田 搬送スピードも速いが、従来型の搬送システムよりも不具合が起きにくいことから採用されるケースも増えている。EVの生産台数はバッテリーの製造能力と直結しているため、機器の不具合やメンテナンスで工場が停まることが最大のリスク。LCMR200はシンプルな構造のため不具合が起きにくく、結果的に生産量が向上したと耳にする。さらに、従来1つの輪のように循環させるだけであったラインから一部を分岐することができるトラバースユニットがある。NG品を逃がしたり、夜間製造時にメンテナンスが必要な部品が発生したときの退避地点として活用することで、メインのラインは止めずに生産を続けることができる。ユーザーの活用シーンに合わせて、アップデートしている。

——新製品のクリーンルーム向けスカラロボット「YK-XEC」は。

畔田 元々YK-XEシリーズというローコストのスカラロボットがある。数年前に販売を始めたら、他のロボットが何十年もかけて築いてきた販売台数を数年で超えてしまった世界中で1番売れている人気モデル。一方で、これまでクリーンタイプは用意していなかったため、お客様がクリーン向けに買おうとすると違うモデルを選ばざるを得なかった。東南アジア地域の工場からの要望もあり、YK-XEシリーズにクリーンタイプを追加することになった。YK-XECは既存のクリーンタイプのスカラロボットに比べて12割安く提供できるようになる。

星野 今の時期に価格を下げるのですか。

畔田 はい(笑)

——訴求する分野は。

畔田 半導体とか電子デバイス向けをメインに考えている。結局、EVに繋がってくるが、パワーモジュールが日本の強みになっている。そのパワーモジュールの生産工場で、我々のロボットや表面実装機がよく採用されている。現在、半導体業界は全体で見ると悪いイメージだが、パワーモジュール向けなど景気が良い分野もあり、戦略的に取り組んできた当社は売上げを増やしている。

——YK-XEシリーズは納期の早さも特長です。

畔田 YK-XEシリーズは、通常でも3週間あれば納品できるが、今年は国内向けには即納体制を敷いていた。YK-XECも量産できる状態でリリースするので、受注いただければ1カ月ほどで納品できると思う。

■eve auto 認知向上が最重要

——本格販売から約1年。eve autonomyの現状を教えてください。

星野 昨年の国際ロボット展で屋外対応型自律搬送サービス「eve auto」を正式リリースしたが、今年12月末までの契約目標50台にかなりいいところまで来ている。加えて、想像していたよりも様々な業界から問い合わせをいただいている。

——年で新しくなった部分はありますか。

星野 ハードとして大きな違いはまだない。しかし、自動運転機能の正常進化は随時進めている。例えば、搬送先の受取り装置が固定のロボットなどである場合、車両の正着性をより厳しく求められるケースがある。その際は自動運転ソフト上で緩やかに止まれるように速度制御するなどで対応したが、こうした重要なニーズに関しては都度アップデートして、既に納入しているユーザーも同様の機能がすぐに使用できるようになっている。前回展と外観は変わっていないが、中身の違いを感じていただきたい。

——最後に2023国際ロボット展に向けて一言お願いします。

畔田 まずは多くの方にデモを見ていただき、具体的な活用イメージを持ってもらいたい。既に課題をお持ちの方だけでなく、自動化のイメージがあまり出来ていない方も是非ブースに立ち寄っていただき、ヤマハ発動機に聞いたら何かしてくれると思ってもらえればと思う。

星野 当社はまだ市場を作っている段階であり、我々の存在を知っていただくのが一番重要な時期。いち早くeve autoの存在を知ってもらい、eve autoありきのライン・オペレーション設計をしてもらえるかが勝負になる。また、この新しい市場を全て当社だけで開拓していこうとは考えていない。屋外だけでなく屋内にも入っていけるeve autoの運用には、前後工程の最適化も重要になってくる。普及スピードを上げていくためにも、取り残された社会課題に一緒に取り組んでいけるパートナーも見つけられればと思っている。

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(2023年11月25日号掲載)