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FUJI 取締役 常務執行役員 マシンツール事業本部長 江崎 一 氏 /マシンツール事業本部 営業部第4営業課 課長 長江 立樹 氏

中国NEV需要をターンキーで取り込み

――中国市場での足元の需要動向をお聞かせください。

江崎 一 氏(左)/長江 立樹 氏(右)

江崎 中国における我々のユーザーは自動車が中心ですが、2018年ごろの受注をピークとするとその当時の水準に戻りつつあります。要因はNEV(新エネルギー車)関連の投資の活発化。多くの試作案件がある中で、BEV量産用の設備受注もすでに始まっており、自動車向けのうち約6割をBEVを含めたNEV関連が占めます。日系自動車メーカーより、現地や欧州の自動車メーカーに部品を納めるティア1の部品メーカーが活発に動いています。

――電動車向けではどの機種が売れ筋でしょうか。

長江 我々が中国・昆山工場で生産している機種は正面2軸旋盤「CSD300Ⅱ」や単軸旋盤「FU300」など。やはりこれらが売れ筋で、eアクスルの減速ギヤやデフケースの内蔵物であるピニオンギヤ・サイドギヤの加工用途で導入いただいています。

――売れている理由をどう見ていますか。

長江 まずは日本の自動車産業で実績を積んだ剛性と信頼性の高い機械だという評価をいただいていること。それに加えて昆山工場では、我々の得意とするロボットなど設備本体以外の周辺装置のエンジニアリング能力を高めています。いわゆる「ターンキー」で自動生産ラインを一括受注したりと、ユーザーの要求に沿ったシステム化を現地でサービスまで完結できるわけです。このようにうまくローカライズを推進しているところも非常に高く評価していただいています。

――JIMTOFでは新型対向2軸旋盤「ANWⅢ」を使ったモータシャフト加工をPRされていました。ANWⅢの中国での販売状況は。

江崎 ANWシリーズはもともと米国で大いに好評を博した機種で、これまでは中国で本格的には販売していませんでした。しかし最近では中国に工場を持つ米国系ユーザーからのANWⅢの引き合いが着実に増えてきていることから、4月のCIMTではCSDFUに加えANWⅢも展示し、自動化も組み合わせつつ他社にない特長でモータシャフト加工における優位性をPRします。

ANW300III.516.jpg

22年に発表した新型対向2軸旋盤「ANW300Ⅲ」。芯押台やミーリング機能も搭載可能で、モータシャフトなど長尺ワークの加工に向く

――ANWⅢのモータシャフト加工における優位性とは。

長江 ANWⅢは対向2軸旋盤ですが、芯押台がオプションで配置できるためeアクスルのモータシャフトのような長尺ワークの加工が可能です。これは他社でもなかなかない特長で、ビルトイン型のアームロボットも標準搭載しており自動化ニーズにも応えられます。これに加え、旧バージョンでは対応できなかった複合加工もオプション対応可能としました。中国におけるモータシャフトの生産が伸びればさらなる自動化・複合加工化も求められるでしょうから、そこにマッチすると考えています。

――昆山工場での建屋の増設を発表されています。計画の概要と狙いを教えてください。

江崎 ロックダウンの影響で当初のスケジュールからは遅れていますが、新棟は24年の立ち上げを目指しています。生産能力を現状の15倍(台数ベース)に高めます。また生産機種の拡大も考えており、一部はすでに現地生産を開始しています。

長江 昆山ではCSDFUも売れ筋の8~10インチサイズを生産していますが、今後は10~12インチサイズやミーリング機能を搭載した「R」仕様など両シリーズの現地ラインアップ拡充を図ります。特にミーリング付きのR機は非常に引き合いが増えており、早急に現地生産を進めたいと考えています。もともと得意なデフケースやデフギヤの加工には現地生産したCSDFUを充て、モータシャフト加工には日本で生産するANWⅢで攻勢をかけます。そしてさらに先のフェイズでは、中国市場でも「GYROFLEX」のような本格的な複合加工機の拡販に力を入れていきます。

2033225日号掲載)