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有光工業株式会社 専務取締役 有光 大幸 氏

効率化の先にある喜びを追求

――2022年まで生産本部長として奈良工場を統括されていました。ご自身が考える貴社のモノづくりにおける強みとは。

「まずはプランジャポンプの主要な部品加工を自社で一貫生産している点です。洗浄機におけるポンプは車で言うエンジンに相当しますが、特に水が絡む部品には高い加工精度が求められます。内製した信頼性の高いポンプを使うからこそ耐久性に優れる洗浄機が作れるわけです。また同じ建屋で最終製品まで一貫して組み上げるため、問題が起きても柔軟かつ素早く対応できます。特注オーダーに応えられるのもこの体勢があるからこそですね」

ありみつ・ひろゆき 技術部、製造部、営業本部、経営企画室と社内の主な部署をひと通り経験したのち、2022年10月まで約3年間にわたり常務取締役 生産本部長として奈良工場を統括。同時期に元々大阪にあった技術部と開発室を奈良工場へ移転しており、技術系の人員を一拠点に集約する効率的な体制づくりに尽力した。22年10月から専務取締役として本社勤務に。最近の趣味はコロナ禍を機にはじめたキャンプで、冬キャンプにも精力的に挑むなど本格的に楽しんでいる。「何かはじめるとそれにのめり込むタイプです。自然は元々好きなので良いリフレッシュになりますね。家族で行くと私がメインになるので緊張しますが(笑)」

――加工機の刷新など工場の強化を進めておられます。取り組みの方向性は。

「老朽化したハードウェアを更新時期に合わせて改善するのはもちろんですが、その際やはり機械化・自動化がコンセプトになります。人手不足という背景もありますが、自動化で機械の方が得意な人作業を減らせればその分の力を別のフィールドで活かしてもらえます。とはいえモノづくりの核はあくまで人。そこで、人を働きやすくするためのソフト的な仕組みも並行して作りたいですね。例えば奈良工場では『一日一善』と題して全員から毎日カイゼンの種を募っていますが、その場かぎりで終わってしまえば発展がありません。ITの力でデジタル的に蓄積する仕組みがあれば会社としても大きなプラスになります」

■負担と無駄をなくす設備

――産業向けから農業向けまで幅広い製品を展開されるなか、特に産業向けでは省力化につながる提案が目立ちます。

「おかげさまで床面全自動洗浄機システムの販売が好調です。自動で泡洗浄とすすぎを行って汚れを排水ダクトに流す仕組みで、スーパーのバックヤードなど比較的小規模なエリアで大変好評をいただいています。床面の清掃はその日の作業を終えた後に行われるものですが、これを自動化すれば人作業が削減され、作業者は早く業務を終えられます。床洗浄自体は付加価値を生まないため自動化のメリットも大きく、横展開の要望もかなり活発です」

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床面全自動洗浄機システム「FJ-03B」は本体サイズが1辺およそ350mmとコンパクト。泡洗浄とすすぎまで自動でこなす

――工場向けの洗浄機の動向はいかがでしょうか。

「工場向け洗浄機も着実に需要が増えており、特にインバータタイプの洗浄機が従来の小型洗浄機に代わる設備として好評を博しています。本体を1台設置すれば配管で必要な箇所にノズルを接続できるため、洗浄機を運ぶ手間が省け、非常に手軽に工場を洗浄できます。ノズルの吐出に合わせてモータの回転数を制御するので運転も省エネ。同時に使用するノズルの最大数で能力を決めるため無駄もありません。メンテナンスも本体だけで済み、別個に洗浄機を導入するより現場負担を軽減できます」

――農業分野ではどういった製品に注力されますか。

「農薬の散布機は様々なメーカーが製造していますが、我々はいかに少ない農薬で最大の効果を出すかという目線で開発を進め、それに寄与する後付け可能なユニットや散布ノズルを展開しています。農薬の散布量を減らすのは農家の経済負担を減らすのとイコールですし、作物の安全にもつながります。農薬は散布してもすべてが作物に付着するわけではありません。我々は霧状の農薬に静電気を付与する『静電付加』という技術を持っており、細かい霧をふんわりと作物全体に付着させられます。散布作業自体も我々の設備で自動化することで、均一かつ負担のない農薬散布を実現します」

――2023年で創業100周年を迎えられます。会社として目指す方向を教えてください。

「メーカーである我々の使命はお客様に良い製品をお届けすること。そして同じ製品を提供するなら、の喜びを生み出せる設備でありたいと常々考えています。例えば床面全自動洗浄機システムは、導入ユーザーから『床面が綺麗だと他の箇所も綺麗に保とうという意識が生まれた』という声を聞きます。農薬の噴霧作業も、効率化で作業を短縮することで一家団欒の時間が増えたという嬉しいお声をいただきます。これは我々の設備による波及効果と言い換えられますが、このように効率化は当然として、その先にある喜びを生み出す設備を作り続けます。そのためにはユーザーのニーズを正確かつ細やかに把握することが必須。また優れた生産体制あってのことなので、生産面の強化・改善も引き続き進めていきます」

(2023年2月25日号掲載)