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ソディック 工作機械事業本部 機械営業統括部 副統括部長 荻野 隆介 氏

EV、5G化で高精度加工機の需要が増加

――中国における貴社の工作機械ビジネスはいかがでしょうか。

「中国は国の目標として2025年までに製造強国の仲間入りをし、2049年までに製造強国のなかのトップリーダーになろうとしていました。ところが米中貿易摩擦、半導体輸出規制、コロナ禍、環境問題などが起こり、成長が緩やかになってきました。ただしポテンシャルはあると思います」

荻野隆介副統括部長と中国で売れている形彫放電加工機「AL60G」

――中国は新車販売台数で大きな市場であるとともにEVの占める割合が高いことでも知られます。

NEV(新エネルギー車)は思ったより販売も製造も伸びが早かった。昨年で689万台。新車販売全体で2686万台ですからNEVの割合は25%を超える計算です。今年は700万台を超えると思います。補助金の効果が大きく、一部、昨年12月で打ち切りになりましたが、今後どんな補助金が出てくるかで伸びが左右されると考えています。ただカーボンニュートラルが世界的なキーワードになっていますから、NEVが伸び続けるのは確かです」

――中国福建省のソディックの生産拠点で新工場が1月末に稼働し、中国での製造・販売をさらに強化されます。

「厦門工場で生産しているワイヤ放電加工機、射出成形機、食品機械は主に中国市場向けです。蘇州工場も同様ですが、タイ工場は欧米・日本・アジア向けと役割を分けています。射出成形機はこの9年間は厦門工場ではつくらず、日本やタイから中国向けに出荷していました。ところが需要が高まってきたので今回の新工場稼働に至りました」

――かつて厦門工場で生産されていた射出成形機をしばらく止めていたのはなぜですか。

 「とんでもない台数を生産するローカルの成形機メーカーがほかにありますから。当社の射出成形機は他社と違い、VLINE(射出と可塑化の工程を分離することで樹脂の高精度な安定成形を導く方式)で精密な成形ができます。が、ローカルメーカーの製品とは価格帯がまったく違う。ところがEV5G化などでそこまでの精度要求の必然性がここにきて出てきたということです」

――厦門工場の位置づけは変わりそうですか。

「引き続き中国市場向けですね。たとえば今中国で生産した機械を米国へ輸出すると関税が23%かかります。トランプ前大統領時代の税制がそのまま続いていますから。当社は日・中・タイに工場をもち、FTAで関税が比較的かからないように輸出するのが得策です」

――中国で伸びしろのある需要分野はありますか。

「米中の問題がなければ半導体関連でしょう。当社は金型関係が強く、後工程で使われる機械は少し前までは期待がもてました。スマートフォンは中国からベトナムやインドに生産拠点が移り始めています。人件費抑制だけでなくリスク分散の狙いもあって。インドは人口が多く市場としても魅力があります。こうした動きにも遅れずについて行かねばなりませんね」

(2023年2月25日号掲載)