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違和感から新たなスタイル確立へ

提案と生産を進化させるとき

「当たり前に違和感を抱くことから始めよう」。今年2月、オーエスジーの代表取締役社長に就任した大沢伸朗氏はスタッフにそう呼びかける。切削工具の提案だけでなく、生産、働き方、グループ内連携など、世界33カ国まで広げてきた成功体験が場合によって足かせになりかねないからだ。社風であるチャレンジ精神も大事にしながら、創立100周年に向けた新たな取り組みが始まる。

オーエスジー 代表取締役社長 大沢 伸朗 氏

-コロナ禍での厳しいスタートになりました。

「足場を固め、筋肉質な体質に磨き直さなければならないときです。受注環境こそ昨年末から強含みに反転し、『航空機以外は悪くないかも』と言える状況にまで回復しましたが、過去の成功体験がかえって足かせになりかねないことを肝に銘じる必要があります。社長就任にあたって、スタッフに『当たり前に違和感を抱くことから始めよう』と呼びかけています」

-対面提案が難しい状況です。

「営業の在り方、常識が変わりました。対面提案は当社が強みとしているものの、このベストなスタイルさえ違和感を持っていきたい。コロナ禍で現地に足を運びにくくなったことで、新規開拓が難しくなったうえ、会うことで人間関係を強める昔ながらの方法が通用しなくなりましたから。一方で、受注システムの改善で在宅勤務が可能になったように、良い意味での変化もありました。リアルとバーチャルの融合として、昨年7月にWEBショールームを立ち上げたことです。取り組み自体に目新しさはないものの、集客性向上と差別化を図る継続的な仕掛けづくりを進めています」

「押さえなければならないのは、リアルとバーチャルのすみ分け。サービスが落ちないようにすることが重要です。こういった取り組みは、中国、米国、インド、欧州のように国土が広く、移動に制約がある地域でも活用できそうです」

-大沢社長が感じている違和感はありますか。

「当社は、考えたことを自由に実行できる社風があります。チャレンジが失敗しても評価する度量の大きさが、世界33カ国にネットワークを広げた原動力とも言えます。私も欧州の責任者として、文化や言語の違いがありながらも、変化に富んだ経験をさせてもらいました。ただ現地責任者の裁量でスピーディーに判断するのは、個別最適化の傾向が強まる原因にもなります。オーエスジー全体にとって、大きなジャンプアップにつながっているのか。チャレンジ精神を大事にしながらも、全体最適化につなげていきたいと思います」

■ONE FACTORYを目指して

-昨年、NEO新城工場が本稼動しました。

「国内工場では、30年ぶりのリニューアルです。多品種少量生産を実現させるために、デジタル化の徹底で工程の見える化を図りました。最適な生産計画を自動でつくるシステム『スケジューラー』以外にも、加工機ごとの稼働率、生産スケジュール、生産状況、流動数などを共有し、収集したデータを分析することでどういった成果が出せるのか。課題の洗い出しを進めているところです。なかには繁忙期でなければ表面化しないこともあるでしょう」

-世界中、どこの工場でも生産できる体制「ONE FACTORY」を目指しています。

NEO新城工場を試金石として、同様の仕組みを国内外の工場に横展開します。といっても、現在は小さなエラーを一つひとつ叩いている状況です」

-コーティング設備にも投資しています。

「米国、メキシコ、トルコ、インド、ベトナムなどの工場にコーティング設備を置いています。切削工具だけでなく、金型、部品も被膜する『ジョブコーティング』として機会の創出につなげるのが狙いです。200300億円の市場規模ですから、事業の柱になるものと期待しています」

■今以上の輝きを放つ

-EVシフトへの対応も注目されています。

「移行期の初期段階ながら、様々な改革が来ていることを感じています。サプライチェーンの判断基準になっているのがグローバルサービス体制。『どこでも同じレベルのサービスを提供できる』という点では、当社には非常に大きなチャンス。EVシフトによって失われる部品と得る部品が、これからクリアになります。そのバランスを見極め、工具需要に喰らいついていきます」

-当面の目標は。

「まず今期の目標である連結売上高1150億円、営業利益115億円の達成です。これは最低でもクリアしたいライン。急激な受注回復に対応する体制を整えて、稼働率を上げれば、利益目標はクリアできるはずです。現在、新たな中期経営計画を考えているところですが、当社の強みであるタップの世界シェアにもこだわっていきます。創立100周年(2038年)になったとき、今以上に輝きを放っていたい。『事業規模を追う』というよりも、地域貢献や働きがいのある会社づくりを通じて、世界各地でオーエスジーの根を生やしていくということです」


プロフィール

おおさわ・のぶあき 1968年生まれ。1991年、早稲田大学理工学部を卒業後、オーエスジーに入社。OSG Europe S.A.代表取締役社長などを経て、欧州、南アジア、日本国内を統括してきた。趣味はゴルフ。座右の銘は「Where there's a will, there's a way(意志あるところに道はある)」。