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加藤電機 代表取締役社長 加藤 学 氏

4月から車内置き去り防止装置義務化
30年の実績と指針以上の品質でこどもを守る

4月から送迎用バス等への置き去り防止安全装置の装備が義務化されている。補助金が用意されていることもあり、夏の本格化を前に装置の設置が進んでいる。ここでは、全国自動車用品工業会を代表して国土交通省主管の置き去り防止を支援するワーキンググループに参加し、ガイドラインの取りまとめに携わった加藤電機の加藤学社長にガイドラインのポイントと、同社の車内置き去り防止安全装置「ホーネットBS-700」シリーズについて話を聞いた。

――ガイドラインのポイントを教えてください。

本ガイドラインをまとめるにあたり国土交通省の第一方針は、法律を変えずに迅速に対応するということでした。そこで、現行の車両への後付け装置に関する保安基準と諸外国の事例を叩き台にガイドラインの方針を固めていきました。また、こどもの命をいかに安全に守るかということが最重要ですので、人が人を管理する過程においてヒューマンエラーが発生するものだという前提に立ち、それを機械的に補完するのが国の狙いでした。

当初から、押しボタン式(現・降車時確認式)と自動検知式が想定されており、降車時確認式は置き去り発生の予防策として、エンジン停止後に鳴る警報音の停止ボタンを車両後方に設置し、警報を止めに行く過程で運転手や職員による車内の見守りを促すシステム。それに対し、自動検知式は万が一置き去りが発生したときに、車内の動きなどを検知して車外へ警報を発するものです。いずれも熱中症のリスクが高まるエンジン停止から15分を基準に、車外に警報が鳴ったり、センサーが作動したりする仕組みです。ガイドラインではこのどちらかを搭載することが義務付けられました(併用も可)。

――義務化から2カ月経ちました。貴社HPには募集をかけるとすぐに予約の枠が埋まってしまうとの記載もあります。導入の進捗はいかがですか。

当社は2021年から一般車向けの置き去り防止機能付きカーセキュリティ用品の開発をしていました。そのため、ガイドラインが出る以前から販売していた旧モデルが一時完売状態になり、現行品にシフトしてからも計画通りに進んでいます。特に、設置後のオプション追加などがしやすいスタンダードモデル「BS700S」(併用型)が売れていて、8割ほどを占めています。個人の方からの問い合わせも来ていますし、補助金の対象ではない塾やスイミングスクールなどでも一部導入が進み始めています。

――導入先からの反応は。

安心できるという声と、保護者からも喜んでいただけたといった声が多いです。また、この装置を導入した際に運転手への教育を行い、意識を高めてもらったという話も耳にします。

一方で、既に運転手が近隣のスーパーに買い物に立ち寄った際、ボタンを押さずに出てしまったことから車外サイレンが鳴り、園に通報があったケースも発生しています。事故にはなっていないヒヤリハットがいかに多いかを示す事例です。

■現場で使いやすい製品に

――適合製品の他社と違いを教えてください。

細かい機能設定ができる点とガイドラインで示される全ての装置が提供できる点は、他社にはあまり見られません。例えば、15分以内に警報を鳴らすと指針にはありますが、5分後にしか鳴らせないメーカーもあります。当社のものは15分以内であれば、すぐにや3分後になど時間設定の変更もできるため、運用が変わったときでもアレンジがしやすいです。ただガイドラインを満たすのではなく、実際の現場で使いやすいものとなっています。

また、当社は30年間カーセキュリティ分野で乗用車やトラックに後付け用の車載部品をつけてきています。そのため、置き去り防止装置も当然保安基準に適合しています。しかし、今回のガイドラインは保安基準を一部緩和している部分があることに加え、他社適合品の中には開発途中の製品も登録されていたり、付け焼き刃の製品も少なくないと聞いています。過酷な車内の状況を知らずに作られたものが、実際の使用環境で問題を起こさないかと危惧しています。

――今後の展開を教えてください。

一般車向けにカーセキュリティと置き去り防止機能をミックスしたような機器を発売したいと考えています。現行の適合製品も、乗用車向けの部品・ノウハウをバスに応用したものなので、当然乗用車にも搭載できますが、個人が使うには機能過多です。乗用車でも使いやすいように機能を簡素化し、価格を抑えたモデルを考えています。早ければ今年の秋頃には発売できるとみています。

ホーネット車内置き去り防止安全装置 BS-700S.jpg

スタンダードモデルの「BS-700S」

(2023年6月10日号掲載)