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碌々スマートテクノロジー 矢野 雄介 社長

「お客様の『困りごと』が当社の成長エンジン」

本年、創立120周年を迎えるにあたり「ソリューションカンパニー」として新たな経営体制を発表した碌々産業。「微細加工機メーカー」としての確固たる立場を確立した海藤満会長から社長のバトンを受けたのは、常に笑みを絶やさない、リアル「笑うセールスマン」こと矢野雄介氏。顧客密着型営業を貫いてきた同氏に、これまでの歩みとこれからの展望を訊いた。

――社長に就任されて2カ月余り、少し落ち着きましたか。

「社内の人間からは『もう少し会社に居なさい、やることあるでしょ』と引き止められています。でも、私が社長になったのはお客様の意見をより深く聞いて、しっかり現場に届けるためです、と言って飛び回っています」

――入社以来、ずっと営業畑を歩かれていますが、ご出身は工学部です。

「技術系職種で応募したのですが、面接の際に野田(謙一)名誉会長から『このなかで営業をやってもいいと思っている方は』という質問があり、挙手したのが私だけでした。それがきっかけで、以来ずっと営業をやらせて頂いています」

――矢野社長は製造業関連のメディア界隈で「あんなに楽しそうに機械を売っている人はなかなか居ない」と評されています。

「本当に営業の仕事は天職だと思っています。入社後しばらくして、微細加工機のセールスに力を入れ始めたのですが、一般的な機械では出来ない加工が、当社の機械ならできる、お客様の加工での困りごとを解決できる、というところに仕事の楽しみを見い出してしまったんです。お客様のできない、をできるに変えて、なおかつ儲けてもらえて、ありがとうと言って頂ける。こんな楽しい仕事は他にありません」

――顧客密着型の営業スタイルなんですね。

「機械を買う前は足しげく通うが、買ったあとはほとんど来ない、という営業さんも少なくないと聞きますが、当社の営業はその真逆ですね。機械を導入して頂いたあとも、加工で分からないことや加工不良など、様々な問題が生じます。それを一緒に解決していきましょう、というスタンスでやっています」

――モノづくりのスピード感が上がる中、いわば足の長い商売をされています。

「当社の機械は微細加工向けということもあり、すぐに売れるケースはほとんどありません。何度もテスト加工や加工提案を続けていくうちに数年が過ぎて、ようやく1台目を買って頂けるといったケースもザラにあります。ただ、導入して頂いたあとの当社の対応や距離感の近さを評価して頂いて、継続的にお取引して貰えている案件も多数あります。当社は大手家電量販店ではなく、いわば町の電器屋さん的な存在ですから」

――貴社は外需比率も高いのですが、海外でもきめの細かいサービスを展開されているのでしょうか。

「日本国内と同様に、とまではいきませんが、お客様のお仕事や加工内容を出来る限り把握して対応するように心がけております。コロナ禍を経てWEBでもいろいろと提案できるようになりましたし、国内と変わらないようなサービスをお届けできるようにしています」

――海外からはどのような加工相談が多いのでしょうか。

「脆性材や超硬を削るようなケースで、工具の選定や加工条件を聞かれることが多いですね。また図面だけ送られてきて『これ出来ます?』なんてこともあります」

■微細加工の問題解決メーカーへ

――昨今では中国、韓国、台湾などの工作機械メーカーも台頭してきています。昨年のJIMTOFには中国・北京精雕が精密加工機を出展していましたが、脅威と感じていますか。

「とある部品加工において、ハイエンドのメーカーは当社の機械を、ローエンドのメーカーは別の機械を使っているんです。そのローエンドのメーカーに北京精雕さんの機械が入ってきたことによって、製品の精度が上がっている、といった話も聞きます。当社に限らず、これまで日本の工作機械でしかできなかった領域をカバーできるようになってきているのは事実ですし、十分脅威に感じています」

――他国製の安価な機械に対抗していくためには。

「機械そのものの精度は当社のアイデンティティですし、ここに関しては自信を持って戦っていきたいですね。また微細加工で実現できる領域を拡大するなり、突き詰めるなりして存在感を高めていきたいです。当社の場合、競合となる加工方法はマシニングによる切削だけではありません。レーザー加工や研削の分野もライバルとなるケースがあります。そういった現場に対して、当社加工機の優位性を提案できるような取組も始めています」

――この10月には「碌々スマートテクノロジー」に社名変更されます。

「創業者が掲げた『お客様の困り事を解決する』を企業理念としてきましたが、今後は『微細加工のソリューションカンパニー』として、機械の提案だけではなく、自動化から加工ノウハウまで、微細加工におけるトータルソリューションを提案できる会社を目指します」

――微細加工の領域においても、今後はさらなる省力化や自動化が進んでいくのでしょうか

「既存の微細加工技術については、自動化がどんどん進んでいくと考えています。しかし、新しいモノを作る、新たな加工技術の確立にはより人が介入していくのではないかと考えています。当社としては自動化のお手伝いはもちろん、現場から新たなイノベーションが生み出されるような機械作りをしていきたいです」

――社長として今後、取り組んでいきたい点は。

「新規に限らず、既存機へのオプション付加など、よりお客様の実態に合った提案をしていきたいですね。ですから、お客様には困りごとや宿題をどんどん頂きたいです。それを一緒に解決していくことが、当社の成長にも繋がりますから」

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微細加工機のスタンダードモデル「MEGA-SSS

(2023年9月10日号掲載)