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タカラスタンダード 代表取締役社長 渡辺 岳夫 氏

マンションのバス市場に伸びしろ

タカラスタンダードは都市部を中心にリフォーム向け・新築向け共に売上を伸ばし、売上高は第2四半期の過去最高を更新。中高級シリーズのシステムバス「グランスパ」の拡販により増収となった。世界初となるホーロー3Dインクジェット印刷を使った新たなホーローシステムキッチン「レミュー」も発売。水回り市場で存在感を増す同社の渡辺岳夫社長に話を聞いた。 

■日本のタカラから世界のタカラへ

——レミューについての戦略的位置づけは。

渡辺 当社は1912年に創業し、ホーローの鍋ややかんを作る会社だったが、戦後それでは立ち行かなくなった。住宅産業が成長すると見込み、キッチンに進出した。後発だったのでホーローでキッチンを作ることで差別化し成長してきた。耐久性や清掃性で優位性があったが、従来のホーローでは表現が限られ現代的ニーズのデザイン性で後れを取りはじめ徐々に停滞。そこで2015年にガラス質を含むインクを利用するホーローインクジェット印刷を開発し多彩なデザインを可能に。その後、端面にも印刷できた世界初のホーロー3Dインクジェット印刷を開発し、再度ホーローで最高級ゾーンに殴り込みをかけようと考えた。

——レミューのターゲットは。

渡辺 レミューはマンションや戸建てのリフォームをターゲットにする。他方、新築のマンション向のキッチンはディベロッパーの多様な要望に柔軟に対応するため木質系を主軸にし、約80%のシェアがある。ホーローではコスト面でそういう柔軟な対応が難しく、木製と住み分けながら成長を目指す。

——リフォームに力をいれていく。

渡辺 人口の減少で新築住宅着工数は間違いなく減っていく。対して住宅のストックは世帯数で5000万戸。半分がリフォーム適齢期であり潜在需要は膨大だ。新築のほうが営業効率はいいので水回りメーカーは両方見据えながらやってきたがいよいよそうも言っていられない。脱炭素という意味でも30年で潰して新築するよりリフォームして長く使うほうがいい。日本も欧米のように長く住み続けることに価値を見出す文化へ成熟するのではないか。

——グランスパが貴社の成長をけん引していますね。

渡辺 キッチンと同じルートで多角化できる商材としてバスに参入。ホーローが浴室でも優位性を発揮し、後発ながら比較的スムーズに推移してきた。グランスパはバスタブ、壁、洗い場を自由に選んで組み合わせられる点が消費者に受け入れられた。新築マンションのキッチンではすでに8割のシェアがあるが、バスはまだまだ。新築マンション専用のバスも発売して非常に好調なので、リフォーム向けのグランスパと合わせて伸びしろのあるバス市場を開拓していきたい。

——地方郊外型から都市部型へビジネスを転換された印象があるが。

渡辺 昔から地方都市重視型で、ショールームは業界で最も多く地域ごとの需要を吸い上げてきた。現在も地方や郊外を引き続き重視する。他方、地方都市の人口減少と高齢化は止められず、競争は激しい都市部のリフォームに打って出る必要があった。ここ5年、首都圏を中心にショールームの強化、都市部の認知度向上にTVCMにも注力し、都市部での好調が業績をけん引する。

——ホーローの新展開は。

渡辺 ホーローに凹凸などのアクセントをつけられたら面白いだろう。また水回り以外の内装材や外装材を発売しており、キッチン、バスに次ぐ柱に育てていきたい。耐久性・清掃性が優れるので不特定多数が触れる公共施設などに適する。沖縄のモノレールの延長区間の駅に採用された。これまでの内外装材だと終電後に高圧洗浄しなければいけなかったが、ホーロー材だと営業時間内に拭き掃除のみ対応できてコスト減につながっていると聞いている。

——海外展開は。

渡辺 現在は売り上げの1%にも満たないが海外展開の部署も立ち上げており10年で100億円へ持っていく。「日本のタカラから世界のタカラへ」を目指そうと言っている。距離が近く生活様式が近いアジア圏が中心となる。東南アジアの高温多湿、中華圏の油料理の多さなどに耐久性、清掃性が発揮できる。韓国との話もあり、システムバスなどでは日本品質の気密性・保温性に優位性がある。急成長のインドなども注視している。

(2023年11月25日号掲載)