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芝浦機械 制御カンパニー 矢部 幸次 プロジェクトリーダー

双腕協働ロボット「RIDRS」シリーズ
ヒトと同じ作業エリアでの自動化に適したロボッ

----各社から様々な協働ロボットが提案されていますが、貴社は協働ロボット市場の現況をどう捉えていますか。

労働人口の低下が世界的に問題視されるなか、業種に関わらず長期的な経済成長を持続的に続けていくためには、より生産性を高めていく必要があります。特に協働ロボットは、従来の産業用ロボットでは適合出来なかった現場でも活用できるため、適応分野の裾野が広がることでマーケットはさらに拡大すると見ています。

今後、既存の産業用ロボットという枠組みの中に『協働』という機能が組込まれた製品が、広く世の中に浸透する日がすぐそこまで来ているのではないでしょうか。

——先に行われた貴社ソリューションフェアではRIDRS-H(人型タイプ)に大きな関心が寄せられていました。

ヒト型は片腕7軸、腰2軸の合計16軸で構成しています。人間の関節数と同様の片腕7軸ですので、把持しているワークの持ち替えや方向転換等など、現場で人が行っていた動作を再現できます。また、他の双腕ロボットとの大きな違いは、腰軸に回転と屈曲の2軸を有している点で、これにより可動範囲を拡大させています。
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ヒト型双腕協働ロボット「RIDRS-H

例えばワークを把持したままで振り返って作業をするような動作も可能で、ヒトの作業をそのまま置き換えることが可能なロボットです。また省スペースで運用できるので、従来ヒトが作業していた現場への配置も可能です。

——RIDRS-S(スカラ型)の特徴も教えて下さい。

「スカラ型は片腕4軸、腰1軸の合計9軸の構成です。並んだ2つのワークを把持する動作はもちろん、1つのワークを両手でつかむ動作や、ワークを持ち上げたままロボットの向きを反転しての搬送も可能です。

スカラロボットの特徴である高速、高精度に加えて、これまで単腕スカラタイプの2台設置では実現が難しかった作業やセル生産装置の小型化に対応出来るロボットに仕上がっています。

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スカラ型双腕協働ロボット「「RIDRS-S

■教示とプログラミングを簡便化

——RIDRSシリーズは、ティーチングやプログラミングについても扱いやすい仕様とされています。

ティーチングはタブレットPCをティーチングペンダントに採用しました。プログラミングやティーチング結果は3Dシミュレーションですぐに確認できます。またオフラインの作業も可能で、装置とロボットを配置して図面寸法でティーチング、現場に設置する前に、効率の良いレイアウト検討が手軽に出来ます。

プログラミングには、各作業単位をブロックで構成するBlocklyを採用しました。こちらは誰でもかんたんに直感的なプログラミングが行えますので、立ち上げ作業の効率化も期待出来ます。また構造的に間違ったプログラムは構築されない仕組みも導入しています。

——上級者向けにプログラミング言語にはPython3も採用されています。こちらは今後のAI活用も視野に入れていらっしゃるのでしょうか。

巷では『いかにAIとロボットを接続する』という議論が未だになされていますが、今後、ロボットの運用がビジョンシステム+AIで行うことが常態化すればするほど、ロボットは『AIの要求に従って都度姿勢を取る』必然性が高まります。

ですからAIから直接ロボットを動かす共通言語として、当社は従来スタイルのロボット言語ではなく、Python3を採用しました。Python3Blocklyに組み込むことで現場の既読性に加えてAIとの親和性も高めています。PythonAIの実装に必要なライブラリやフレームワークが充実しておりますので、今後ロボットへのAI利活用の幅もさらに拡大していけると考えています。

——RIDRSシリーズは今後どういった市場にセールスを強めていくのでしょうか。

国内大手自動車関連各社では、光熱費・原材料の高騰から、工場インフラの拡大に消極的で、人が行っていた作業を如何に同スペースで自動化するか、に腐心されています。そうした現場に積極的にアピールしていきたいと考えています。また当社成形機をお使いのお客様からも自動化のニーズが寄せられており、いずれのケースも、当社が直接システムを受け賜わる事で、費用対効果と顧客満足の最大化に寄与できると考えています。

(2023年11月25日号掲載)