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テスコ 内藤 剛 社長

修繕ビッグデータを活用、保守と更新で店舗支える

顧客が本業に集中できるよう、店舗設備のメンテナンスを一括して請け負うテスコ(東京・三鷹市)。現在は、すかいらーくグループをはじめ、多くの飲食店を中心にサービスを展開する業界のトップランナーでもある。現在も順調な成長曲線を描き続ける同社・内藤剛社長にメンテナンス及び設備更新需要について訊いた----。

父(内藤秀雄シンメンテホールディングス会長兼社長)は、57歳にしてメンテナンス会社を創業し、全国展開に取り組み、着実に事業を拡大してきた。

「父は一人でメンテナンスをやっていたころから『全国、全アイテム、あらゆるチェーンストアをお支えしたい』と口にしていました。それまでも、水回り、空調、厨房機器など個々のメンテナンス業者はいましたが、お店を運営する立場からすれば、設備のトラブルは一括して対処して貰えたほうが維持管理も楽です。そうしたニーズに応えるために、オールインワンでメンテナンスをお届けできる会社を目指し、全国各地の業者さんとのネットワークを地道に築き上げていきました」

創業後しばらくは電話とFAXでトラブルを一件ごと対処し、徐々に協力会社を増やしていくというスタイル。そんな父を間近で見てきた内藤社長は当時、誰もが知る大手外資系IT企業で辣腕を奮っていた。

「チェーンの居酒屋ですと、夜中はもちろんランチ営業もやっている。600もの店舗から依頼が来るのですが、電話とFAXの前に居ないと瞬時に対応できない。そうなると家にも帰れません。たまたま自分はITを齧っていたので、依頼FAXを電子メールで転送し、依頼を管理するメンテシステムに繋げるシステムをつくってあげていました。」

 なかば片手間で父親の事業のサポートを手掛けていた内藤社長が、ITコンサルタントからメンテナンス業界に転身したのは2016年。入社して最初に手掛けた仕事は、同業他社のM&A。当時は他社の傘下にあったテスコの買収だった。

「メンテシステムの構築こそ初期から携わっていましたが、自分は実務としてメンテをした経験がなかったですし、業者さんにもメーカーさんにもコネクションがありませんでした。父の会社で役職を貰ったとしても周囲はなかなか認めてくれません。そういった中でテスコM&Aを担当できたことは幸運でした。正しく分析し、しかるべき金額で買収。しっかり計画を立てて、計画通りの利益を出す。成功すれば周りが認めてくれる、そのチャンスをいただいたのです」

■省エネ需要にも対応

父子二人三脚で、当初赤字だったテスコの経営を短期間で黒字化。その後内藤社長は、前職で培ったITのチカラで社内の改革を推し進めている。

「当社は月間1万件の依頼を処理しており、累計するとかなりの量の修繕情報を有しています。このデータを活用し、これまでの『設備が壊れたらお金を使う』から、計画的なメンテナンスや設備更新でコストを抑えて頂けるような提案をしています」

同社の計画修繕プラン「Pメンテ」は空調機器や給湯器といった特定の季節に問題が起こりやすい設備を対象に、10年単位のスパンで修繕や交換を計画的に実施するサービス。突然壊れるリスクを軽減するとともに、トータルコストを抑制する。

「昨今、特に重要視しているのが空調機器です。コロナ禍以降、業界を問わず綺麗な空気に対する期待は強まっています。また古い空調機器はメンテナンスや電力消費の面でもランニングコストがかかるケースも少なくありません。省エネの観点でも、当社なら更新から保守まで、お客様の現場に合わせた最適なご提案が可能です」

また内藤社長は本年9月にロボットによるエアコン清掃の自動化、省力化を図る「シンロボサービス」を設立。清掃効果とメンテナンス効率の向上を目指す取り組みも行っている。

「この業界が面白いなと思うのは、いろいろと効率化しても最後の最後は人手が必要となるところです。当社はそれに従事している人たちがやりがいを持って働けて、なおかつ地位も高められるような企業を目指していきたいですね」

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テスコは店舗エアコンの更新からメンテナンスまで請け負っている

(2023年11月25日号掲載)