日本物流新聞生産財と消費財の業界専門紙として半世紀を超す実績。
日本物流新聞社のWEBサイトでは、
ものづくりを支える工作機械、工具、ロボット、産業機器等の情報から、
ハウジングはじめ住まい・暮らしの様々なニュースをお届けしています。

検索

Voice

髙丸工業 代表取締役社長 髙丸 正 氏

ロボットは多品種少量生産の省力化装置

髙丸工業は1978年からロボットに軸足を置いてきた老舗のロボットSIerでロボット導入実証事業(SIerの採択件数、平成27年、28年、29年度)全国一位となる。採択全てが多品種少量生産の中小企業だ。髙丸正社長に中小企業のロボット導入について話を聞いた。

■ロボット導入、人手不足解消に焦点

——まずは国際ロボット展の出展内容を教えてください。

髙丸 産業用ロボットを遠隔で誰でもかんたんなPC操作でティーチングすることが可能なロボットシステムになります。特許も取っています。「事務所でオシャレな服のまま溶接作業を出来るようにする」という構想を実現しました。普段ロボットを操作する事も溶接を行う事もない従業員が、ロボット溶接を実演します。今回は安川電機製・ダイヘン製の2システムを出展しますが、同様の操作で異なるメーカーのロボットが動く点に注目ください。

——中小企業へのロボットの導入のサポートを積極的にされていますが。

髙丸 ロボットは多品種少量生産のための省力化装置です。しかし自動車関連で使われるイメージから大量生産向けとの誤解も。特に中小企業だと「当社は多品種少量生産だからロボットの導入は難しい」と本質とは逆のことを言われます。

——中小企業からはどんな要望が多いですか。

髙丸 サイクルタイムを何秒縮める、などではなく、ほとんどが「人手不足対応」です。導入した経営者の感想は「人を入れてもしんどくてすぐに辞めてしまう。ロボットは辞めない」がほとんど。「この作業をやれるのはAさん一人だが、もう70歳を超えている、どうするんだ」という切実な問題なのです。溶接できる職人さんが溶接ロボットを使う必要はない。何も知らない新人さんにロボットを使わせなさいと言っています。

——ロボット導入で中小企業の職場は変わりますか。

髙丸 多くの現場では「新人B君は溶接は出来ないがロボットはうまく使うな」となり「そのB君が風邪で休んだとき、別のC君にやらせても同じものができる」と驚きます。これがデジタイゼーションです。新しい案件を受注したら「この前の品物は250㌂だったからこれなら280㌂ぐらいですかね」となればもうデジタライゼーション。そしていつの間にかIoT、AI、DXと進んでいきます。

——学生の教育にも力を入れておられますね。

髙丸 中小企業がロボットを入れない一番の言い訳は「うちに、使える人がいない」です。17年前から、中小企業に就職する可能性が高い地元高校生にロボット見学会を実施しています。みんな「ロボットはかっこいい」と言います。溶接工募集では昨今人が集まりにくいですが、「溶接ロボットオペレーター募集」なら? 若い人がかっこいいと感じ、一生懸命働ける職場環境を中小企業が用意することが重要です。
DSC_1960.jpg

国際ロボット展にむけ調整を進める遠隔溶接システム

(2023年11月25日号掲載)