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牧野フライス製作所 執行役員 営業本部副本部長 西野 正 氏

独自性もつ製品で半導体分野に照準

――工作機械業界は内外需ともに調整局面が続いてるようです。  

「そうですね、当社の受注は前年に比べ2割くらいは落ちています。受注残がありますが、来期以降がちょっとしんどいですね。ただ、大型案件などもあって踏みとどまっています」  

――どのようにして受注を獲得していますか。  

「新製品をPRする一方で、大きな引合いをいただいた際にいかに取りこぼさないようにするかに気をつけています。社内各部署の協力をもらうなどして、とりわけ海外の大きな案件はしっかりと対応します」

マキノに入社以来41年間、営業畑を歩む西野正副本部長。最近はチョコザップに通い始めた。「全国どこでも利用できるので便利。エアロバイクをぼーっと30分くらい漕いだりしています」

――ウェブの活用も積極的です。

「インサイド営業部でウェビナーを週に一度は開き、お客様に興味をもっていただいてそのアンケートによって何らかの糸口がつかもうとしています。また展示会をウェブで案内したりもしています」

――製品を提案される際に、重視されていることはありますか。

「当社の製品は制御を含め機械的な部分でオリジナリティーがあると思っています。それに加えて加工技術の人間を多く抱えてますから、加工技術的な部分でいろんな形で提案できます」

――ハードもソフトも強いと。

「うちの機械を使えばこれだけ削れます、というところは積極的に出しています。採用している制御装置『プロフェッショナル6』は独自の制御技術によってお客様のプログラムを変えなくても従来の加工機と比較して、ワーク形状によって違いますが加工能率の差は数十%になることもあります」

――商社との連携は重視していますか。

「ITが進んでも、やはり人間関係が大きくものを言う世界です(笑)。意識してるのは我々レベルと商社さんの上層部、当社の所長レベルと各拠点の部長さん・課長さんレベル、それと担当者レベル。これら3階層でお付き合いを深めていかねばなりません。海外では基本的に1商社に対して1メーカーでの商売ですが、日本はいわばスーパーマーケット。ですから、いかにして当社を薦めてもらうかというのは、商社さんとの付き合い方で変わってくると思いますね」

■万能なAPC仕様5軸MC

――いま最も売りたい製品は。

「昨年のMECTに出品した5軸制御立形マシニングセンタ『DA500』です。半導体市場がおそらく今年後半から、遅くても来年あたりは間違いなく立ち上がってきますから。ドカンと来ると長納期化してしまうので準備が欠かせません。DA500はとりわけ半導体関係のお客様にピッタリの機種と言えます。いま全国の各地で披露しているところです」

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(写真=MECTで披露したパレットマガジン仕様の「DA500」)

――自社開発のパレットマガジンに特長があります。

「最大ワーク径800㍉と機械サイズの割に大きなワークを積載することができます。しかも大きいワークと小さいワークを混在させられます。最初に決める必要がありますが、たとえばワーク径800㍉だけなら4枚パレットの仕様になり、800㍉を2枚、あとの3枚は550㍉という5枚パレット仕様にもできます。あるいは680㍉だけで6枚とか、550㍉だけで8枚という仕様にもできます」

――売れ行きはいかがですか。

「想定以上の受注になっています。海外でまとまった受注があり、国内でもご注文をいただいています。当初言っていた10月の納期をどこまで前倒しできるか。センサーやカメラを搭載してワークの適切な設置を瞬時に判断できる機能もオプションで用意しています。ある意味、チャレンジングな仕様でオールマイティな機械と言えます」

――今後開拓していきたい市場と、それに対してどう取り組みますか。

「医療分野を含めてあらゆる業界を開拓していきたいと思います。目先のところでは半導体業界。ただし半導体は非常に激しい業界でお客様の検収期間は非常に短く、いますぐに機械がほしいとおっしゃる方が結構います。検討に時間が割けないとなると、従来使っている機械をそのままリピートで採用しようとされるお客様が多い。だから当社の機械を使われているお客様はいいのですが、そうでないとひっくり返すのは難しい。それでも新規のお客様をどんどん攻めていきたいですね」

独自開発の製品を揃える牧野フライス製作所はハードだけでなくソフトも強い。ユーザーニーズにきめ細かく対応するパレットマガジンはその最たるものだろう。景気の踊り場にあっても踏みとどまり、来る半導体市場の拡大を虎視眈々と窺う。


提案力もつ営業担当者

どんなに技術力を高めても売れなければ意味がない。本当の意味で提案力をもつ営業担当者が必要になる。西野副本部長は「最近は製造現場を見せていただけないお客様が多い。それでも問題点を察知して、お客様に適した提案ができることが重要」と見る。

(2024年3月10日号掲載)