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東洋アルミニウム パウダー・ペースト事業本部 河村 和彦 氏、木下 康 氏、越智 裕 氏、田中 貴雅 氏

高付加価値モノづくりを支える「3D積層造形用アルミ合金粉末」

積層造形におけるアルミニウム合金粉末の市場規模は、2021年の6180万㌦から2030年には2億7760万㌦に成長すると予測されている。このジャンルにおける世界有数のプレイヤーである東洋アルミニウムは、高機能かつ造形精度に優れた粉末を国内外に向けて供給している。そんな同社パウダー・ペースト事業本部のキーマン4人に、直近の販売動向と需要について訊いた。

左から河村和彦氏、木下康氏、越智裕氏、田中貴雅氏

――BtoCからBtoBまで幅広いアルミニウム関連製品を手掛ける貴社ですが、積層造形粉末事業にはいつ頃参入されたのでしょうか。

木下(康氏=執行役員) 当社は古くから冶金などに使用されるアルミ粉末を手掛けておりましたが、金属積層用のアルミ合金粉末への取り組みは2014年からになります。

――市場の伸長を実感されていますでしょうか。

河村(和彦氏=機能材チーム) 間違いなく年々増加していますが、当社が狙っているのは、一般的なアルミ積層造形の市場ではなく、特殊なアルミ合金粉末を必要としている市場です。実際に航空宇宙分野やレース向けといった高付加価値の部品加工を行っている現場での活用が進んでいます。

――国内及び国外の需要については。

木下 まず国内市場に関しては、まだ始まったばかりで、現状は欧米が6~7割を占めているのが現状です。特に欧米では昨今、航空宇宙に加え防衛向けニーズも伸長しています。こうしたモノづくりに対しては、積層造形や当社が扱っている素材が開発スピードやコスト面での優位性が出ます。

――貴社のアルミ合金粉末の特徴は。

越智(裕氏=機能材チームリーダー) 積層造形に求められる粉末には流動性が求められ、出来るだけ球形に近い形状が良いとされています。当社のアルミニウムベース合金パウダー「SPHERALLOY(スフェラロイ)」は、50ミクロン前後の均一な真球形状となっており、精度の高い造形を可能にします。これをベースに、ユーザーの要望に合わせて、合金組成を変えられるのも当社の強みです。添加する金属によって、ユーザーが求める機能性を満たす粉末を提供できます。

――作成したいワークに最適なアルミ粉末を提案されている。

田中(貴雅氏=アソシエイトスペシャリスト) 当社が戦略的パートナーシップを結んでいるAPWORKS社の「Scalmalloy(スカルマロイ=APWORKS社の登録商標)」という素材に当社がスカンジウムを添加した「Toyal Scalmalloy」は良好な溶接性でありながら、高強度と優れた延性を両立させています。こちらは汎用組成であるAL10SIMGと比べて高強度である為、航空宇宙向けやレーシングパーツに使用されています。

また「Toyal Spheralloy TCFE1Z」は熱伝導率に優れ、高い耐食性を誇ります。こちらは最新の熱交換器などに使用されています。

■高温・高強度への対応がカギ

――現在はどういった金属粉末の開発に注力されているのでしょうか。

越智 やはり高温、高強度が1つのテーマになってきます。アルミ合金粉末がより活用の幅を拡げていくためには、ここを実現できるかできないかがかなり大事な部分になってきます。当社でもグループ会社などとアライアンスを組んで開発を加速させており、昨年はサンプルをドイツで開催されたFormnext(世界最大級の積層造形関連展示会)にも出品しています。

田中 展示会にはエキゾーストマニホールドとインペラを展示させて頂きましたが、様々な方面から高い評価を頂いています。

――近年では金属粉末のリサイクルにも積極的に取り組まれています。

木下 受託サービスを手掛けるビューロ、グループ会社と共に積層造形で生じる廃材を企業連携で100%再利用する仕組み作りをしています。合金には高価な金属も含まれますし、精錬する上でのエネルギー消費も大きい。リサイクルによってCO2低減と資源の有効活用が可能になります。

――現在は欧米が主役となっている金属積層造形ですが、日本のモノづくりこそ付加価値の高い加工にシフトしなければならない現状です。

河村 国内はまだ手探り状態が続いている状況ですが、海外ではすでに『金属積層造形だからこそ高付加価値のモノづくりが出来る』という実例がどんどん出てきています。国内のモノづくり企業もいまが先んじて取り組めるチャンスではないかと考えています。

木下 お客様が『儲かるモノ』を作っていただくために当社は素材の段階から一緒に歩んでいけたらと考えております。今後は研究機関や工作機械メーカー、同業の素材メーカー様としっかり連携し、高付加価値のモノづくりに応える粉末を提供していきたいです。

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(写真=SPHERALLOYで製作されたワーク)

モノづくりを足元から支える

アルミ箔・アルミペーストにおいて世界トップクラスのシェアを誇る東洋アルミニウム。その製品群は多岐に渡り、持ち前のアルミ加工技術と異素材との組み合わせで顧客に最適な素材を提供できるのが強みだ。身近なところでは「フタの裏にヨーグルトが付着しない」加工アルミ箔は国内で販売されているパック型ヨーグルトの大半に採用されている。また誰もが知るベストセラー自動車の塗料やブランド化粧品用の顔料など、日常生活に欠かせないプロダクトの製造を足元から支えている。

(2024年3月10日号掲載)